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自製か購入かの意思決定の計算例

ここでは、自製か購入かの意思決定について、具体的な計算例を用いて解説します。

計算の前提

甲社では、部品Aを製造しています。

部品Aの1個あたり製造原価は以下の通りです。

  1. 直接材料費=2,000円
  2. 直接労務費=1,000円×2時間=2,000円
  3. 製造間接費=500円×2時間=1,000円
  4. 合計=5,000円

製造間接費は、変動費が100円/時間、固定費総額は4,000,000円、正常操業度は10,000機械作業時間です。したがって、正常配賦率は、500円/時間です。

  • 100円/時間+4,000,000円/10,000時間=500円/時間

部品Bの製造原価

次期の予算編成にあたり、機械に500時間の遊休時間が発生することが予測されました。この遊休時間を利用して新たに部品Bを自製するか、それとも、部品Bを購入するか、いずれが有利になるかが検討されました。

部品Bを自製した場合、新たに工員を900円/時間の賃金で雇わなければなりません。また、部品Bを自製するためには専用の機械を50,000円で賃借しなければなりません。

次期に必要となる部品Bは500個と見積もられており、新たに賃借する機械の生産能力も500個です。そこで、部品Bの1個あたりの製造原価を計算すると以下のようになりました。

  1. 直接材料費=1,000円
  2. 直接労務費=900円×2時間=1,800円
  3. 製造間接費=500円×1時間=500円
  4. 機械賃借料=50,000円/500個=100円
  5. 合計=3,400円

部品Bの仕入価格

この見積りを見た購買部門長は、仕入先から部品Bを1個あたり3,200円で購入可能であることから、自製せず購入する方が有利だと指摘しました。

そこで、購買部門長が言うように部品Bを購入する方が有利かを検討することにしました。

部品Bの製造で新たに発生する原価の総額

部品Bを自製する場合には、増分原価がいくらになるかを計算しなければなりません。

直接材料費と直接労務費は、部品Bの生産に従って発生するので、増分原価です。

また、機械の賃借料も、部品Bを自製することで新たに発生することから増分原価です。

しかし、製造間接費については、変動費は増分原価ですが、固定費は操業度と関係なく一定額が発生するので埋没原価です。

したがって、部品Bを500個自製した場合の増分原価の総額は1,500,000円になります。

  1. 直接材料費=1,000円×500個=500,000円
  2. 直接労務費=900円×2時間×500個=900,000円
  3. 変動製造間接費=100円×1時間×500個=50,000円
  4. 機械賃借料=50,000円
  5. 合計=1,500,000円

部品Bの購入原価の総額

次に部品Bを500個仕入れた場合の購入原価の総額を計算します。

  • 部品Bの購入原価総額
    =3,200円×500個=1,600,000円

したがって、部品Bを自製した方が、総額で100,000円節約できるので、部品Bを自製するべきです。

  • 1,600,000円-1,500,000円=100,000円

C製品を製造販売する案

上で部品Bを自製する案が有利であることがわかりました。

そこで、既存設備を利用して新たにC製品を製造販売する案が示されました。

C製品の販売価格は2,500円/個、直接材料費は800円/個、直接作業時間と機械作業時間はともに1時間/個でした。

C製品の予想販売数量は300個と見積もられ、遊休機械作業時間500時間のうち300時間をC製品の製造に充てることができます。しかし、残り200時間は遊休となり、部品Bの自製も断念しなければなりません。

部品Bを自製するか、C製品を製造販売するか、どちらの案が有利であるかを再検討することになりました。

C製品の限界利益

部品Bの自製とC製品の製造販売のどちらが有利かを検討するためには、まずC製品の1個当たり限界利益を計算しなければなりません。

C製品1個あたりの限界利益

  • 販売価格=2,500円
  • 直接材料費=800円
  • 直接労務費=1,000円×1時間=1,000円
  • 変動製造間接費=100円×1時間=100円
  • 限界利益=600円

したがって、C製品を300個製造販売した場合には、180,000円の限界利益を得られます。

  • C製品の限界利益の総額
    =600円×300個=180,000円

部品Bの自製とC製品の製造販売のどちらが有利かの判定

部品Bの自製が有利か、C製品の製造販売が有利かを判定するためには、C製品の製造販売によって諦めなければならない機会原価がいくらなのかを知る必要があります。

ここでは、最初に部品Bを自製するか購入するかを検討した際に自製が100,000円有利であることがわかっています。

もしも、C製品を製造販売した場合には、部品Bの自製は諦めなければならないので、部品Bを購入せず自製した場合に節約できる100,000円が機会原価になります。

したがって、C製品の製造販売で得られる限界利益180,000円と比較されるのは、部品Bを自製した場合の節約額100,000円です。

  • 180,000円-100,000円=80,000円

よって、C製品を製造販売した方が、80,000円だけ経済的に有利となります。