全部原価計算におけるCVP分析
ここでは、全部原価計算におけるCVP分析について、具体例を用いて解説します。
計算の前提
甲社は、全部原価計算を採用しており、CVP分析も全部原価計算を前提にして行うことにしました。CVP分析に必要な資料は以下の通りです。
販売価格と原価標準
製品の販売価格と単位当たり標準原価は以下の通りです。
- 販売価格=1,000円
- 直接材料費=100円
- 直接労務費=150円
- 変動製造間接費=70円
- 固定製造間接費=180円
正常操業度は5,000個、固定製造間接費予算額は900,000円です。
当期の実際生産量は4,500個で、固定製造間接費配賦差異(操業度差異)は売上原価に賦課します。
販売費および一般管理費
販売費および一般管理費は以下の通りです。
- 製品単位当たり変動費=100円/個
- 固定費総額=310,000円
目標営業利益
当期の目標営業利益は、1,200,000円です。
損益分岐点売上高の計算
全部原価計算では、以下の計算式で損益分岐点売上高を計算します。
- 損益分岐点売上高
=(製造間接費配賦差異+販売・管理固定費)/{1-(製造単位原価+変動販売単位原価)/売価}
固定製造間接費配賦差異の計算
正常操業度は5,000個、実際生産量は4,500個、単位当たり固定製造間接費が180円なので、固定製造間接費配賦差異は-90,000円(不利差異)になります。
- 固定製造間接費配賦差異
=(実際生産量-正常操業度)×単位当たり固定製造間接費
=(4,500個-5,000個)×180円
=-90,000円(不利差異)
損益分岐点売上高
損益分岐点売上高は、1,000,000円です。
- 損益分岐点売上高
=(90,000円+310,000円)/{1-(100円+150円+70円+180円+100円)/1,000円}
=400,000円/(1-600円/1,000円)
=400,000円/0.4
=1,000,000円
なお、損益分岐点販売量は、1,000個です。
- 損益分岐点販売量
=1,000,000円/1,000円=1,000個
目標営業利益達成売上高の計算
目標営業利益1,200,000円を達成する売上高は、4,000,000円です。
- 目標営業利益達成売上高
=(目標営業利益+製造間接費配賦差異+販売・管理固定費)/{1-(製造単位原価+変動販売単位原価)/売価}
=(1,200,000円+90,000円+310,000円)/{1-100円+150円+70円+180円+100円)/1,000円}
=1,600,000円/0.4
=4,000,000円
なお、目標営業利益達成販売量は、4,000個です。
- 目標営業利益達成販売量
=4,000,000円/1,000円=4,000個
利益図表
以上の計算を利益図表(PV図表)にすると以下のようになります。