最小二乗法(回帰分析法)による原価分解
ここでは、最小二乗法(回帰分析法)で、原価を固定費と変動費に分解する方法を具体例を用いて解説します。
計算の前提
甲社では、製品の直接費を工学的方法(IE法)により算定しています。また、製造間接費の発生額は、散布図法(スキャターチャート法)によって分析したところ、直接作業時間と密接な関係があることがわかりました。
そこで、甲社では、最小二乗法によって製造間接費を固定費と変動費に分解し、標準原価カードを作成することにしました。
直接費の標準原価
直接材料費と直接労務費の製品1個あたりの標準原価は以下の通りです。
当期の正常操業度は、500時間(100個)と予定されています。
製造間接費の実績データ
製造間接費の原価標準は、過去6ヶ月間の実績データに基づいて算定します。過去6ヶ月間の製造間接費実際発生額は以下の通りです。
原価分解
総原価は、以下の1次式で表せます。
y=a+bx
そして、最小二乗法では、以下の1組の正規方程式を解くことで、固定費と変動費率を求めることができます。
固定費と変動費率の計算
最小二乗法で、固定費と変動費率を計算するためには、まず以下のような表を作成するのが便利です。
- x:毎月の生産量を記入
- y:毎月の原価を記入
- xy:生産量に原価を乗じる
- x²:生産量を2乗する
上記の表から以下の方程式を解きます。
すなわち、
円未満を四捨五入すると、a=196,847円、b=1,024円。
したがって、変動費率は1,024円/個、固定費は196,847円になります。
標準原価カードの作成
製品1個あたりの標準直接作業時間は5時間なので、変動費率を単位時間あたりにすると、204.8円/時間になります。
- 単位時間当たりの変動費率
=1,024円/5時間=204.8円/時間
次に固定費率は、固定費196,847円を正常操業度500時間で除して393.7円/時間になります。
- 固定費率
=196,847円/500時間=393.7円/時間
したがって、製造間接費の標準配賦率は598.5円/時間となり、標準原価カードは以下のようになります。
また、標準直接原価計算の場合の標準原価カードは以下のようになります。