加重平均限界利益を用いた売上品構成差異と売上数量差異の分析
売上品構成差異(組合せ差異)と売上数量差異(販売数量差異)を通常の方法で計算した場合、以下の問題点が生じます。
- 平均よりも低い限界利益の製品が、予算構成比率を上回って販売された場合、経済的に不利な影響を与える。しかし、当該製品の売上品構成差異は有利差異として計算されてしまう。
- 反対に平均よりも低い限界利益の製品が、予算構成比率を下回って販売された場合、経済的に有利な影響を与えるが、当該製品の売上品構成差異は不利差異として計算されてしまう。
このような問題は、売上品構成差異と売上数量差異の計算に加重平均限界利益(加重平均貢献利益)を用いることで解消します。
加重平均限界利益を用いた場合のそれぞれの計算式は、以下の通りです。
- 売上品構成差異
=(当該製品の予算単位限界利益-加重平均予算単位限界利益)×(当該製品の実際販売数量-当該製品の予算販売数量) - 売上数量差異
=加重平均予算単位限界利益×(当該製品の実際販売数量-当該製品の予算販売数量)
上記計算式を図示すると以下のようになります。
なお、加重平均予算単位限界利益は、以下の計算式で算定します。
- 加重平均予算単位限界利益
=Σ(予算単位限界利益×予算販売数量)/Σ(予算販売数量)
計算例
ここでは、加重平均限界利益を用いた売上品構成差異と売上数量差異について、具体例を用いて解説します。
計算の前提
甲社では、A製品とB製品を製造・販売しています。
当社では、直接原価計算を採用しており、予算と実績との限界利益の差異を販売価格差異、変動費差異、販売数量差異に分析しています。
さらに販売数量差異については、売上品構成差異と売上数量差異に細分析しています。
当期の予算損益計算書の一部は以下の通りです。
そして、当期の実際損益計算書の一部は以下の通りです。
A製品の予算実績差異分析
まず、A製品について、販売価格差異、変動費差異、販売数量差異を計算します。
販売価格差異
販売価格差異は、実際販売価格と予算販売価格との差に実際販売数量を乗じて計算します。
- 販売価格差異
=(120円-100円)×495個
=9,900円(有利差異)
変動費差異
変動費差異は、予算単位変動費と実際単位変動費との差に実際販売数量を乗じて計算します。
- 変動費差異
=(60円-78円)×495個
=-8,910円(不利差異)
販売数量差異
販売数量差異は、実際販売数量と予算販売数量との差に予算単位限界利益を乗じて計算します。
- 予算単位限界利益
=100円-60円
=40円 - 販売数量差異
=(495個-600個)×40円
=-4,200円(不利差異)
加重平均予算単位限界利益
各製品の売上品構成差異と売上数量差異を計算するためには、まず、加重平均予算単位限界利益を計算しなければなりません。
- 加重平均予算単位限界利益
=(24,000円+30,000円)/(600個+400個)
=54,000円/1,000個
=54円
売上品構成差異
売上品構成差異は、予算単位限界利益と加重平均予算単位限界利益との差に実際販売数量と予算販売数量との差を乗じて計算します。
- 売上品構成差異
=(40円-54円)×(495個-600個)
=1,470円(有利差異)
売上数量差異
売上数量差異は、実際販売数量と予算販売数量との差に加重平均予算単位限界利益を乗じて計算します。
- 売上数量差異
=(495個-600個)×54円
=-5,670円(不利差異)
以上の分析結果を図示すると以下のようになります。
B製品の予算実績差異分析
B製品についても、A製品と同じように販売価格差異、変動費差異、販売数量差異を計算します。
販売価格差異
販売価格差異は、実際販売価格と予算販売価格との差に実際販売数量を乗じて計算します。
- 販売価格差異
=(160円-150円)×405個
=4,050円(有利差異)
変動費差異
変動費差異は、予算単位変動費と実際単位変動費との差に実際販売数量を乗じて計算します。
- 変動費差異
=(75円-88円)×405個
=-5,265円(不利差異)
販売数量差異
販売数量差異は、実際販売数量と予算販売数量との差に予算単位限界利益を乗じて計算します。
- 予算単位限界利益
=150円-75円
=75円 - 販売数量差異
=(405個-400個)×75円
=375円(有利差異)
売上品構成差異
売上品構成差異は、予算単位限界利益と加重平均予算単位限界利益との差に実際販売数量と予算販売数量との差を乗じて計算します。
- 売上品構成差異
=(75円-54円)×(405個-400個)
=105円(有利差異)
売上数量差異
売上数量差異は、実際販売数量と予算販売数量との差に加重平均予算単位限界利益を乗じて計算します。
- 売上数量差異
=(405個-400個)×54円
=270円(有利差異)
以上の分析結果を図示すると以下のようになります。
通常の分析方法との比較
加重平均限界利益を用いる方法と通常の方法を比較すると、売上品構成差異と売上数量差異の合計額は一致しますが、製品別の内訳は異なります。
当ページで使用した計算例と通常の方法で使用した計算例は全く同じものです。両者でどのように異なっているか、一度、確認してください。