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ころがし計算法(平均法)による固定費調整の計算例

ここでは、直接原価計算の利益を全部原価計算の利益に調整するころがし計算法(平均法)を計算例を用いて解説します。

計算の前提

甲社は、内部管理用に直接原価計算を採用しており、期末に固定費調整を行って全部原価計算による利益に修正し、公表しています。

生産に関する情報

当期の生産数量に関する情報は以下の通りです。

  1. 期首仕掛品数量=100個(加工進捗度40%)
  2. 当期投入数量=2,000個
  3. 期末仕掛品数量=300個(加工進捗度50%)
  4. 完成品数量=1,800個

材料は工程の始点で投入しています。

期首仕掛品原価

  1. 材料費=1,000円
  2. 変動加工費=1,000円
  3. 固定加工費=400円

当期製造費用

  1. 材料費=22,100円
  2. 変動加工費=49,700円
  3. 固定加工費=21,050円

販売に関する情報

当期の販売数量に関する情報は以下の通りです。

  1. 期首製品数量=400個
  2. 当期完成品数量=1,800個
  3. 期末製品数量=200個
  4. 当期販売数量=2,000個

期首製品原価

  1. 材料費=3,300円
  2. 変動加工費=9,300円
  3. 固定加工費=3,960円

当期の製品の販売価格は100円です。

販売費および一般管理費

当期の実際販売費および一般管理費は以下の通りです。

  1. 変動費=12,000円
  2. 固定費=6,000円

期末の仕掛品原価と製品原価は平均法で計算しています。

直接原価計算の利益から全部原価計算への利益の調整は、ころがし計算法で行っています。

変動製造原価の計算

直接原価計算では、変動製造原価だけで、仕掛品原価と製品原価を計算します。

仕掛品原価を計算するためには、T勘定を作成して数量関係を把握するのが便利です。なお、赤字は加工進捗度を加味した完成品換算量です。

仕掛品の数量

次に以下のような原価計算表を作成します。なお、直接原価計算では、変動製造原価(材料費、変動加工費)だけで製品原価を計算します。

仕掛品の原価計算表

材料費

期末仕掛品原価は、平均法で計算します。

期末仕掛品原価

  • 平均単価=(1,000円+22,100円)/(100個+2,000個)=11円/個
  • 期末仕掛品原価=11円×300個=3,300円

完成品原価

したがって、材料費の完成品原価は19,800円になります。

  • 完成品原価=1,000円+22,100円-3,300円=19,800円

変動加工費

変動加工費も、基本的に材料費と同じように計算しますが、数量は完成品換算量であることに注意しなければなりません。

期末仕掛品原価

  • 平均単価=(1,000円+49,700円)/(40個+1,910個)=26円/個
  • 期末仕掛品原価=26円×150個=3,900円

完成品原価

したがって、変動加工費の完成品原価は46,800円になります。

  • 完成品原価=1,000円+49,700円-3,900円=46,800円

変動売上原価の計算

変動売上原価を計算する場合も、仕掛品と同じようにT勘定を作成して数量関係を把握するのが便利です。

製品の数量

次に以下のような原価計算表を作成し、変動売上原価を計算します。

製品の原価計算表

材料費

期末製品原価は、仕掛品と同じく平均法で計算します。

期末製品原価

  • 平均単価=(3,300円+19,800円)/(400個+1,800個)=10.5円/個
  • 期末仕掛品原価=10.5円×200個=2,100円

売上原価

したがって、材料費の売上原価は21,000円になります。

  • 売上原価=3,300円+19,800円-2,100円=21,000円

変動加工費

変動加工費も、材料費と同じように計算します。

期末製品原価

  • 平均単価=(9,300円+46,800円)/(400個+1,800個)=25.5円/個
  • 期末製品原価=25.5円×200個=5,100円

売上原価

したがって、変動加工費の売上原価は51,000円になります。

  • 売上原価=9,300円+46,800円-5,100円=51,000円

変動売上原価

以上より、変動売上原価は72,000円になります。

  • 変動売上原価=21,000円+51,000円=72,000円

直接原価計算の損益計算書の作成

直接原価計算の損益計算書は以下の通りです。

直接原価計算の損益計算書
  • 売上高=100円×2,000個=200,000円
  • 固定加工費=当期発生額21,050円を期間費用として損益計算書に計上する。

固定費調整

直接原価計算の営業利益に固定製造原価(固定加工費)を調整し全部原価計算の営業利益に調整します。

ころがし計算法では、固定製造原価も仕掛品、製品の順に平均法で計算し、期末仕掛品に含まれる固定製造原価と期末製品に含まれる固定製造原価を求めます。

期末仕掛品に含まれる固定製造原価

期末仕掛品に含まれる固定製造原価を計算するには、以下のような原価計算表を作成すると便利です。なお、数量は加工進捗度を加味した完成品換算量です。

仕掛品(固定加工費)の原価計算表
  • 平均単価=(400円+21,050円)/(40個+1,910個)=11円/個
  • 期末仕掛品に含まれる固定加工費=11円×150個=1,650円

期末製品に含まれる固定製造原価

期末製品に含まれる固定製造原価を計算するには、以下のような原価計算表を作成すると便利です。

製品(固定加工費)の原価計算表
  • 平均単価=(3,960円+19,800円)/(400個+1,800個)=10.8円/個
  • 期末製品に含まれる固定加工費=10.8円×200個=2,160円

全部原価計算の営業利益

直接原価計算の営業利益に調整する固定加工費は、以下の計算式で求めます。

  • 固定費調整額
    =期末の仕掛品と製品に含まれる固定加工費-期首の仕掛品と製品に含まれる固定加工費
    =(1,650円+2,160円)-(400円+3,960円)
    =-550円

したがって、固定費調整後の全部原価計算の営業利益は、88,400円になります。

固定費調整後の全部原価計算の損益計算書