営業利益の予算実績差異分析の計算例
ここでは、営業利益の予算実績差異分析について、具体例を用いて解説します。
計算の前提
甲社は、直接原価計算を採用しています。
当期の予算損益計算書は以下の通りです。
製品に関するデータ
工程の始点で材料を投入して製品を製造しています。当期投入分はすべて完成し、また完成品は全て販売します。したがって、期首も期末も仕掛品と製品の在庫はありません。
予算生産量と予算販売量
- 予算生産量=10,000個
- 予算販売量=10,000個
実際生産量と実際販売量
- 実際生産量=9,900個
- 実際販売量=9,900個
予算変動製造原価
製品1個あたりの直接材料費、直接労務費、変動製造間接費の予算のデータは以下の通りです。
- 直接材料費=5円×2単位=10円
- 直接労務費=20円×2時間=40円
- 変動製造間接費=5円×2時間=10円
- 単位当たり変動製造原価合計=60円
当期の正常操業度は20,000直接作業時間です。
実際変動製造原価
直接材料費、直接労務費、変動製造間接費の実績データは以下の通りです。
- 直接材料費:単価=5.2円、総消費量=19,900単位
- 直接労務費:賃率=21円、直接作業時間合計=19,500時間
- 変動製造間接費:実際配賦率=4.8円、実際発生額=93,600円
固定製造間接費のデータ
- 予算額=150,000円
- 実際発生額=152,000円
販売に関するデータ
- 予定販売価格=100円
- 実際販売価格=98円
販売費および一般管理費
販売費は変動費、一般管理費は固定費です。
予算
- 販売費=10円/個×10,000個=100,000円
- 一般管理費=50,000円
実績
- 販売費=11円/個×9,900個=108,900円
- 一般管理費=51,000円
予算と実績との差異の分析
甲社では、予算制度を採用しており、営業利益について予算と実績との差異分析を行っています。
実際損益計算書
以上の資料から作成した当期の実際損益計算書は以下の通りです。
営業利益の差異分析には、損益計算書の科目別に分析する方法と営業利益に与える影響別に分析する方法があります。
以下では、それぞれの分析結果について解説します。
損益計算書の科目別に分析する方法
損益計算書の科目別に分析する方法では、予算と実績との営業利益の差異について、売上高差異、変動費差異、固定費差異に分析します。
- 営業利益差異
=51,720円-100,000円=-48,280円(不利差異)
売上高差異の分析
売上高差異は、販売価格差異と販売数量差異とに分析します。
販売価格差異
販売価格差異は、実際販売価格と予定販売価格との差に実際販売数量を乗じて計算します。
- 販売価格差異
=(98円-100円)×9,900個=-19,800円(不利差異)
販売数量差異
販売数量差異は、実際販売数量と予定販売数量との差に予定販売価格を乗じて計算します。
- 販売数量差異
=(9,900個-10,000個)×100円=-10,000円(不利差異)
売上高差異の合計額
売上高差異の合計額は、-29,800円(不利差異)です。
- 売上高差異の合計額
=-19,800円-10,000円=-29,800円(不利差異)
変動費差異の分析
変動費差異は、単位原価差異と販売数量差異に分析します。
単位原価差異
単位原価差異は、予算単位変動費と実際単位変動費との差に実際販売数量を乗じて計算します。
- 予算単位変動費
=10円+40円+10円+10円=70円 - 実際単位変動費
=606,580円/9,900個+11円=72.2707円 - 単位原価差異
=(70円-72.2707円)×9,900個=-22,480円
販売数量差異
販売数量差異は、予算販売数量と実際販売数量との差に予算単位変動費を乗じて計算します。
- 販売数量差異
=(10,000個-9,900個)×70円=7,000円(有利差異)
変動費差異の合計額
以上より、変動費差異の合計額は、-22,700円(不利差異)になります。
- 変動費差異の合計額
=-22,480円+7,000円=-15,480円(不利差異)
固定費差異
固定費差異は、予算固定費と実際固定費との差として計算します。
- 固定費差異
=200,000円-203,000円=-3,000円(不利差異)
営業利益差異の合計額
売上高差異、変動費差異、固定費差異の合計額-48,280円(不利差異)は、営業利益差異と一致します。
- 営業利益差異の合計額
=-29,800円-15,480円-3,000円=-48,280円(不利差異)
営業利益に与える影響別に分析する方法
営業利益に与える影響別に分析する方法では、予算と実績との営業利益の差異について、限界利益差異(貢献利益差異)と固定費差異に分析します。
限界利益差異
限界利益差異は、販売価格差異、販売数量差異、変動費差異に分析します。
販売価格差異
販売価格差異は、実際販売価格と予定販売価格との差に実際販売数量を乗じて計算します。
- 販売価格差異
=(98円-100円)×9,900個=-19,800円(不利差異)
販売数量差異
販売数量差異は、実際販売数量と予定販売数量との差に予算単位限界利益を乗じて計算します。
- 予算単位限界利益
=100円-(10円+40円+10円+10円)=30円 - 販売数量差異
=(9,900個-10,000個)×30円=-3,000円(不利差異)
変動費差異
変動費差異は、予算単位変動費と実際単位変動費との差に実際販売数量を乗じて計算します。
- 変動費差異
=(70円-72.2707円)×9,900個=-22,480円(不利差異)
限界利益差異の合計額
以上より、限界利益差異の合計額は、-45,280円(不利差異)になります。
- 限界利益差異の合計額
=-19,800円-3,000円-22,480円=-45,280円(不利差異)
固定費差異
固定費差異は、予算固定費と実際固定費との差として計算します。
- 固定費差異
=200,000円-203,000円=-3,000円(不利差異)
営業利益差異の合計額
限界利益差異と固定費差異の合計額-48,280円(不利差異)は、営業利益差異と一致します。
- 営業利益差異の合計額
=-45,280円-3,000円=-48,280円(不利差異)