作業屑
作業屑は、投入した直接材料のうち、生産物とならず屑として残ったものをいいます。
原価計算基準28では、作業屑は副産物の処理および評価に準ずる旨が規定されています。
したがって、作業屑評価額は、完成品原価から控除することになりますが、直接材料費から控除する方法も認められます。また、軽微な作業屑は売却時に原価計算外の収益として処理することもできます。
作業屑の計算例
ここでは、作業屑の計算方法を具体例を用いて解説します。
計算の前提
丙社は、総合原価計算を採用しており、完成品原価と期末仕掛品原価は先入先出法で算定しています。
期首仕掛品
- 数量=100個
- 加工進捗度=40%
- 直接材料費=4,900円
- 加工費=3,500円
当期投入
材料は工程の始点で投入します。
- 数量=1,610個
- 直接材料費=78,560円
- 加工費=126,640円
期末仕掛品
- 数量=80個
- 加工進捗度=50%
仕損品
加工進捗度30%の地点で仕損品が30個発生しました。仕損品評価額は600円です。仕損品評価額は、直接材料費から60%、加工費から40%を控除します。なお、仕損品は当期投入分から発生したものとし、度外視法で完成品と期末仕掛品に負担させます。
作業屑
作業屑は、工程を通して平均的に20個発生しました。作業屑の売却価額とそれに要する販売費および一般管理費は以下の通りです。なお、作業屑評価額は当期投入分の直接材料費から控除します。
- 売却価額=15円/個
- 販売費および一般管理費=5円/個
副産物
副産物は、加工の終点で80個発生しました。
副産物は、そのまま外部に売却可能です。なお、副産物の見積売却価額と販売費および一般管理費は以下の通りです。
- 売却価額=70円/個
- 販売費および一般管理費=20円/個
完成品
当期の完成品数量は1,500個です。
数量関係の把握
総合原価計算では、T勘定を作成して数量関係を把握するのが便利です。T勘定の作成では、まず貸方の数量を記入し、その後に借方の期首仕掛品数量を記入して、当期投入数量を計算します。なお、T勘定の赤字は、数量に加工進捗度を乗じた完成品換算量です。
原価計算表の作成
数量関係を把握した後は、以下のような原価計算表を作成し、完成品原価と期末仕掛品原価を計算します。
直接材料費
仕損は当期投入分から発生し、完成品と期末仕掛品に度外視法で負担させるので、当期投入数量から仕損品数量を控除します。
作業屑は、当期投入分の直接材料費から控除します。
したがって、期末仕掛品を算定するための単位原価は、当期投入数量から仕損品と作業屑を差し引いた数量で、当期製造費用から仕損品評価額と作業屑評価額を差し引いた金額を除して計算します。
- 数量=1,610個-30個-20個=1,560個
- 仕損品評価額=600円×60%=360円
- 作業屑評価額=20個×(15円-5円)=200円
- 金額=78,560円-360円-200円=78,000円
- 単位原価=78,000円/1,560個=50.0円
したがって、直接材料費の期末仕掛品原価は4,000円、完了品原価は78,900円になります。
- 期末仕掛品原価=50.0円×80個=4,000円
- 完成品原価=78,000円-4,000円+4,900円=78,900円
加工費
加工費の計算も基本的に直接材料費と同じですが、数量は加工進捗度を加味した完成品換算量であることに注意しなければなりません。
- 数量=1,599個-9個-10個=1,580個
- 仕損品評価額=600円×40%=240円
- 金額=126,640円-240円=126,400円
- 単位原価=126,400円/1,580個=80.0円
したがって、加工費の期末仕掛品原価は3,200円、完了品原価は126,700円になります。
- 期末仕掛品原価=80.0円×40個=3,200円
- 完成品原価=126,400円-3,200円+3,500円=126,700円
副産物評価額
副産物80個は、売却価額から販売費および一般管理費を控除して評価額とします。
- 副産物評価額=80個×(70円-20円)=4,000円
期末仕掛品原価と完成品原価
以上より、期末仕掛品原価は7,200円、完成品原価は201,600円です。
- 期末仕掛品原価=4,000円+3,200円=7,200円
- 完成品原価=78,900円+126,700円-4,000円=201,600円
- 完成品単位原価=201,600円/1,500個=134.4円