度外視法による正常減損の計算例（先入先出法）
ここでは、製品原価の計算に総合原価計算を採用している場合に度外視法で正常減損を処理する方法を計算例を用いて解説します。
なお、完成品総合原価と期末仕掛品原価は先入先出法で計算しています。
目次
正常減損が工程の始点で発生した場合
乙社は、総合原価計算を採用しており、完成品と期末仕掛品原価は先入先出法で算定しています。
期首仕掛品数量は50個、加工進捗度は40%です。期首仕掛品に含まれる直接材料費は1,150円、加工費は675円です。
当期投入数量は800個で、直接材料費は15,200円、加工費は22,260円です。
当期の完成品数量は750個です。
期末仕掛品数量は60個、加工進捗度は20%です。
材料は工程の始点で投入します。
減損は工程の始点で40個発生し、すべて正常です。減損は当期投入分から発生したものとし、完成品と期末仕掛品の両方に度外視法で負担させます。
数量関係の把握
総合原価計算では、T勘定を作成して数量関係を把握するのが便利です。T勘定の作成では、まず貸方の数量を記入し、その後に借方の期首仕掛品数量を記入して、当期投入数量を計算します。なお、T勘定の赤字は、数量に加工進捗度を乗じた完成品換算量です。
度外視法で、減損を完成品と期末仕掛品に負担させる場合は、減損分は最初から投入しなかったものとするので、貸方の減損40個（0個）は、借方の当期投入数量から差し引きます。
原価計算表の作成
数量関係を把握した後は、以下のような原価計算表を作成し、完成品原価と期末仕掛品原価を計算します。
直接材料費
直接材料費の期末仕掛品原価を計算する際の単位原価は、当期投入数量から減損数量を差し引いた数量で、当期製造費用を除します。
- 数量=800個-40個=760個
- 単位原価=15,200円/760個=20.0円
したがって、直接材料費の期末仕掛品原価は1,200円、完成品原価は15,000円になります。
- 期末仕掛品原価=20.0円×60個=1,200円
- 完成品原価=15,200円-1,200円+1,150円=15,150円
加工費
加工費の計算も、直接材料費と基本的に同じですが、数量は加工進捗度を加味した完成品換算量であることに注意しなければなりません。
- 数量=742個-0個=742個
- 単位原価=22,260円/742個=30.0円
したがって、加工費の期末仕掛品原価は360円、完成品原価は22,575円になります。
- 期末仕掛品原価=30.0円×12個=360円
- 完成品原価=22,260円-360円+675円=22,575円
期末仕掛品原価と完成品原価
以上より、期末仕掛品原価は1,560円、完成品原価は37,725円、完成品単位原価は50.3円です。
- 期末仕掛品原価=1,200円+360円=1,560円
- 完成品原価=15,150円+22,575円=37,725円
- 完成品単位原価=37,725円/750個=50.3円
正常減損を完成品と期末仕掛品原価に負担させる場合
乙社は、総合原価計算を採用しており、完成品と期末仕掛品原価は先入先出法で算定しています。
期首仕掛品数量は50個、加工進捗度は40%です。期首仕掛品に含まれる直接材料費は1,150円、加工費は675円です。
当期投入数量は800個で、直接材料費は15,200円、加工費は23,340円です。
当期の完成品数量は750個です。
期末仕掛品数量は60個、加工進捗度は80%です。
材料は工程の始点で投入します。
減損は工程の50%の地点で40個発生し、すべて正常です。減損は当期投入分から発生したものとし、完成品と期末仕掛品の両方に度外視法で負担させます。
数量関係の把握
総合原価計算では、T勘定を作成して数量関係を把握するのが便利です。T勘定の作成では、まず貸方の数量を記入し、その後に借方の期首仕掛品数量を記入して、当期投入数量を計算します。なお、T勘定の赤字は、数量に加工進捗度を乗じた完成品換算量です。
度外視法で、減損を完成品と期末仕掛品に負担させる場合は、減損分は最初から投入しなかったものとするので、貸方の減損40個（20個）は、借方の当期投入数量から差し引きます。
原価計算表の作成
数量関係を把握した後は、以下のような原価計算表を作成し、完成品原価と期末仕掛品原価を計算します。
直接材料費
直接材料費の期末仕掛品原価を計算する際の単位原価は、当期投入数量から減損数量を差し引いた数量で、当期製造費用を除します。
- 数量=800個-40個=760個
- 単位原価=15,200円/760個=20.0円
したがって、直接材料費の期末仕掛品原価は1,200円、完成品原価は15,150円になります。
- 期末仕掛品原価=20.0円×60個=1,200円
- 完成品原価=15,200円-1,200円+1,150円=15,150円
加工費
加工費の計算も、直接材料費と基本的に同じですが、数量は加工進捗度を加味した完成品換算量であることに注意しなければなりません。
- 数量=798個-20個=778個
- 単位原価=23,340円/778個=30.0円
したがって、加工費の期末仕掛品原価は1,440円、完成品原価は22,575円になります。
- 期末仕掛品原価=30.0円×48個=1,440円
- 完成品原価=23,340円-1,440円+675円=22,575円
期末仕掛品原価と完成品原価
以上より、期末仕掛品原価は2,640円、完成品原価は37,725円、完成品単位原価は50.3円です。
- 期末仕掛品原価=1,200円+1,440円=2,640円
- 完成品原価=15,150円+22,575円=37,725円
- 完成品単位原価=37,725円/750個=50.3円
正常減損を完成品のみに負担させる場合
乙社は、総合原価計算を採用しており、完成品と期末仕掛品原価は先入先出法で算定しています。
期首仕掛品数量は50個、加工進捗度は40%です。期首仕掛品に含まれる直接材料費は1,150円、加工費は675円です。
当期投入数量は800個で、直接材料費は16,000円、加工費は22,860円です。
当期の完成品数量は750個です。
期末仕掛品数量は60個、加工進捗度は20%です。
材料は工程の始点で投入します。
減損は工程の50%の地点で40個発生し、すべて正常です。減損は当期投入分から発生したものとし、完成品に負担させます。
数量関係の把握
総合原価計算では、T勘定を作成して数量関係を把握するのが便利です。T勘定の作成では、まず貸方の数量を記入し、その後に借方の期首仕掛品数量を記入して、当期投入数量を計算します。なお、T勘定の赤字は、数量に加工進捗度を乗じた完成品換算量です。
減損を完成品のみに負担させる場合は、借方数量から減損分の数量を差し引かずに期末仕掛品原価を算定するための単位原価を計算します。
原価計算表の作成
数量関係を把握した後は、以下のような原価計算表を作成し、完成品原価と期末仕掛品原価を計算します。
直接材料費
直接材料費の期末仕掛品原価を計算する際の単位原価は、当期投入数量で、当期製造費用を除します。
- 単位原価=16,000円/800個=20.0円
したがって、直接材料費の期末仕掛品原価は1,200円になります。
- 期末仕掛品原価=20.0円×60個=1,200円
直接材料費の完成品原価は、当期製造費用から期末仕掛品原価を差し引き、期首仕掛品原価を加算した15,950円になります。
- 完成品原価=16,000円-1,200円+1,150円=15,950円
加工費
加工費の計算も、直接材料費と基本的に同じですが、数量は加工進捗度を加味した完成品換算量であることに注意しなければなりません。
- 単位原価=22,860円/762個=30.0円
したがって、加工費の期末仕掛品原価は360円、完成品原価は23,175円になります。
- 期末仕掛品原価=30.0円×12個=360円
- 完成品原価=22,860円-360円+675円=23,175円
期末仕掛品原価と完成品原価
以上より、期末仕掛品原価は1,560円、完成品原価は39,125円、完成品単位原価は52.2円です。
- 期末仕掛品原価=1,200円+360円=1,560円
- 完成品原価=15,950円+23,175円=39,125円
- 完成品単位原価=39,125円/750個=52.2円
正常減損が平均的に発生する場合
乙社は、総合原価計算を採用しており、完成品と期末仕掛品原価は先入先出法で算定しています。
期首仕掛品数量は50個、加工進捗度は40%です。期首仕掛品に含まれる直接材料費は1,150円、加工費は675円です。
当期投入数量は800個で、直接材料費は15,200円、加工費は22,260円です。
当期の完成品数量は750個です。
期末仕掛品数量は60個、加工進捗度は20%です。
材料は工程の始点で投入します。
減損は加工を通して平均的に発生します。当期の減損は40個で、すべて正常です。減損は当期投入分から発生したものとし、完成品と期末仕掛品の両方に度外視法で負担させます。
数量関係の把握
総合原価計算では、T勘定を作成して数量関係を把握するのが便利です。T勘定の作成では、まず貸方の数量を記入し、その後に借方の期首仕掛品数量を記入して、当期投入数量を計算します。なお、T勘定の赤字は、数量に加工進捗度を乗じた完成品換算量です。減損は平均的に発生するので、加工進捗度は50%で計算します。
度外視法で、減損を完成品と期末仕掛品に負担させる場合は、減損分は最初から投入しなかったものとするので、貸方の減損40個（20個）は、借方の当期投入数量から差し引きます。
原価計算表の作成
数量関係を把握した後は、以下のような原価計算表を作成し、完成品原価と期末仕掛品原価を計算します。
直接材料費
直接材料費の期末仕掛品原価を計算する際の単位原価は、当期投入数量から減損数量を差し引いた数量で、当期製造費用を除します。
- 数量=800個-40個=760個
- 単位原価=15,200円/760個=20.0円
したがって、直接材料費の期末仕掛品原価は1,200円、完成品原価は15,150円になります。
- 期末仕掛品原価=20.0円×60個=1,200円
- 完成品原価=15,200円-1,200円+1,150円=15,150円
加工費
加工費の計算も、直接材料費と基本的に同じですが、数量は加工進捗度を加味した完成品換算量であることに注意しなければなりません。
- 数量=762個-20個=742個
- 単位原価=22,260円/742個=30.0円
したがって、加工費の期末仕掛品原価は360円、完成品原価は22,575円になります。
- 期末仕掛品原価=30.0円×12個=360円
- 完成品原価=22,260円-360円+675円=22,575円
期末仕掛品原価と完成品原価
以上より、期末仕掛品原価は1,560円、完成品原価は37,725円、完成品単位原価は50.3円です。
- 期末仕掛品原価=1,200円+360円=1,560円
- 完成品原価=15,150円+22,575円=37,725円
- 完成品単位原価=37,725円/750個=50.3円
減損が平均的に発生する場合は、減損を完成品と期末仕掛品の両方に負担させます。
したがって、度外視法では、期末仕掛品の加工進捗度が減損発生点を通過している場合に減損を完成品と期末仕掛品に負担させる計算と減損が平均的に発生する場合の計算は、同じになります。
ただし、減損が平均的に発生する場合の減損の完成品換算量は50%で計算するのに対して、工程の一定点で減損が発生する場合の完成品換算量は加工進捗度によって変化します。そのため、両者の計算結果が同じになるわけではない点に留意しなければなりません。