追加原材料の投入で製品量が増加する場合の工程別総合原価計算の計算例
ここでは、追加原材料の投入で製品量が増加する場合の工程別総合原価計算の計算方法を具体例を用いて解説します。
計算の前提
甲社は、累加法による工程別総合原価計算により製品原価を計算しています。なお、完成品総合原価と期末仕掛品原価の計算は、先入先出法で行っています。
第1工程の始点でA材料を投入します。第2工程では、第1工程の完成品を工程の始点で投入し、加工進捗度が60%の地点でB材料を追加投入します。
第1工程
第1工程の各種情報は以下の通りです。
期首仕掛品
- 数量=30kg
- 加工進捗度=40%
- 直接材料費=215円
- 加工費=157円
期末仕掛品
- 数量=20kg
- 加工進捗度=30%
当期投入
第1工程の当期の直接材料費は1,920円、加工費は2,684円です。
完了品
第1工程の完了品は250kgです。
第1工程完了品は全量を第2工程に投入します。
第2工程
第2工程の各種情報は以下の通りです。
期首仕掛品
- 数量=70kg
- 加工進捗度=50%
- 前工程費=1,274円
- 加工費=476円
期末仕掛品
- 数量=60kg
- 加工進捗度=70%
当期投入
第2工程では、第1工程完了品2kgに対してB材料を1kg投入します。
B材料1kgの単価は5円です。
第2工程の当期の加工費は3,822円です。
完成品
第2工程の完成品は420kgです。
第1工程の計算
数量関係の把握
総合原価計算では、T勘定を作成して数量関係を把握するのが便利です。T勘定の作成では、まず貸方の数量を記入し、その後に借方の期首仕掛品数量を記入して、当期投入数量を計算します。なお、T勘定の赤字は、数量に加工進捗度を乗じた完成品換算量です。
原価計算表の作成
数量関係を把握した後は、以下のような原価計算表を作成します。
直接材料費の計算
完成品と期末仕掛品原価の計算は先入先出法で行うので、期末仕掛品原価を計算するための単位原価は、当期投入数量で当期製造費用を除して計算します。
- 単位原価=1,920円/240kg=8.0円
上記単位原価8.0円を期末仕掛品数量に乗じて、期末仕掛品原価を計算します。
- 期末仕掛品原価=8.0円×20kg=160円
したがって、完成品原価は1,975円になります。
- 完成品原価=1,920円-160円+215円=1,975円
加工費の計算
加工費の計算も基本的に直接材料費と同じですが、数量は完成品換算量を使うことに注意しなければなりません。
- 単位原価=2,684円/244kg=11.0円
したがって、加工費の期末仕掛品原価と完成品原価は以下のようになります。
- 期末仕掛品原価=11.0円×6kg=66円
- 完成品原価=2,684円-66円+157円=2,775円
期末仕掛品原価と完成品原価
以上より、第1工程の期末仕掛品原価、完成品原価、完成品単位原価は以下のようになります。
- 期末仕掛品原価=160円+66円=226円
- 完成品原価=1,975円+2,775円=4,750円
- 完成品単位原価=4,750円/250kg=19.0円
第2工程の計算
第2工程では、第1工程完了品が工程の始点で投入され、加工進捗度60%の地点でB材料が追加投入されます。
数量関係の把握
第2工程でもT勘定を作成して数量関係を把握します。なお、T勘定の黒字は前工程費の数量、青字は追加材料の数量、赤字は数量に加工進捗度を乗じた完成品換算量です。
B材料は、加工進捗度60%の地点で投入します。加工進捗度が50%の期首仕掛品にはB材料は含まれていません。一方、加工進捗度が70%の期末仕掛品にはB材料が含まれています。
したがって、当期に投入したB材料の全てが完成品と期末仕掛品に含まれています。
当期の完成品数量は420kg、期末仕掛品数量は60kgなので、合計480kgのうち160kgがB材料の当期投入数量となります。
- B材料の当期投入数量
=(420kg+60kg)/(2kg+1kg)×1kg=160kg
B材料の当期投入数量160kgは、完成品数量420kgと期末仕掛品数量60kgの比率でそれぞれに配分します。
- B材料の完成品数量=160kg/(420kg+60kg)×420kg=140kg
- B材料の期末仕掛品数量=160kg/(420kg+60kg)×60kg=20kg
次に完成品数量と期末仕掛品数量のそれぞれからB材料分を差し引いて、前工程費分の完成品数量と期末仕掛品数量を計算します。
- 前工程費の完成品数量=420kg-140kg=280kg
- 前工程費の期末仕掛品数量=60kg-20kg=40kg
加工費の計算に使う完成品換算量は、工程の始点で投入される前工程費の数量に加工進捗度を加味して計算します。
原価計算表の作成
数量関係を把握した後は、以下のような原価計算表を作成します。
前工程費
第1工程完了品全量の250kgを第2工程の始点で投入します。期末仕掛品原価を計算するための単位原価は、前工程完了品の単位原価19.0円を使います。
- 期末仕掛品原価=19.0円×40個=760円
したがって完成品原価は5,264円になります。
- 完成品原価=4,750円-760円+1,274円=5,264円
追加原材料
B材料は工程の60%の地点で投入されるので、 期首仕掛品にB材料は含まれていません。したがって、当期製造費用を完成品と期末仕掛品に配分します。
B材料の単位原価は5.0円なので、期末仕掛品原価は100円、完成品原価は700円になります。
- 当期製造費用=160kg×5.0円=800円
- 期末仕掛品原価=20個×5.0円=100円
- 完成品原価=800円-100円=700円
加工費
加工費の計算は、基本的に前工程費と同じです。ただし、数量は加工進捗度を加味した完成品換算量であることに注意しなければなりません。
期末仕掛品原価と完成品原価を計算するための単位原価は以下の計算により14.0円になります。
- 単位原価=3,822円/273個=14.0円
したがって、期末仕掛品原価と完成品原価は以下のようになります。
- 期末仕掛品原価=14.0円×28kg=392円
- 完成品原価=3,822円-392円+476円=3,906円
期末仕掛品原価と完成品原価
以上より、第2工程の期末仕掛品原価、完成品原価、完成品単位原価は以下のようになります。
- 期末仕掛品原価=760円+100円+392円=1,252円
- 完成品原価=5,264円+700円+3,906円=9,870円
- 完成品単位原価=9,870円/420kg=23.5円