単純総合原価計算の計算例-平均法
単純総合原価計算で、完成品総合原価と期末仕掛品原価を平均法で算定する方法を計算例を用いて解説します。
計算の前提
甲社は、単純総合原価計算によってA製品の原価を把握しています。
期末仕掛品原価と完成品原価は、平均法によって算定しています。
期首仕掛品
期首仕掛品数量は100個、加工進捗度は30%です。期首仕掛品原価に占める直接材料費と加工費は以下の通りです。
- 直接材料費=1,200円
- 加工費=800円
当期製造費用
当期投入数量は1,500個で、直接材料は工程の始点で投入しています。当期製造費用に占める直接材料費と加工費は以下の通りです。
- 直接材料費=19,600円
- 加工費=40,780円
期末仕掛品
期末仕掛品数量は120個、加工進捗度は50%です。
完成品
当期の完成品数量は1,480個でした。
T勘定の作成
総合原価計算で、期末仕掛品原価と完成品原価を算定する際は、まずT勘定を作成して、数量と完成品換算量を計算し、数量関係を把握するとわかりやすくなります。
直接材料費の数量の把握
T勘定を作成する際は、まず貸方(右側)から数量を入れていきます。
完成品数量は1,480個、期末仕掛品数量は120個なので、それぞれ貸方に記入します。
次に借方の期首仕掛品数量100個を記入します。
最後に貸方合計数量1,600個から期首仕掛品数量100個を差し引いて、当期投入数量1,500個を記入します。
加工費の数量の把握
加工費の数量関係の把握も、基本的に直接材料費と同じです。しかし、直接材料費は、工程の始点で材料を投入しているので、そのままの数量をT勘定に記入すれば良いのに対して、加工費の場合は、期首仕掛品と期末仕掛品の数量に加工進捗度を乗じた完成品換算量を記入する必要があります。
したがって、完成品数量以外は、直接材料費と加工費で数量が一致しないことに留意しなければなりません。
加工費の場合も、まずは貸方の完成品数量と期末仕掛品数量を記入します。完成品数量は直接材料費と同じ1,480個です。しかし、期末仕掛品は、120個に加工進捗度50%を乗じた60個になります。
次に借方の期首仕掛品数量100個に加工進捗度30%を乗じた30個を記入します。
最後に貸方合計数量1,540個から期首仕掛品数量30個を差し引いて、当期投入数量1,510個を記入します。
原価計算表の作成
以上で、直接材料費と加工費の数量関係を把握できたので、原価計算表を作成して、期末仕掛品原価と完成品原価を計算します。
直接材料費の計算
期末仕掛品原価と完成品原価は、平均法で計算するので、期首仕掛品原価と当期製造費用の合計額を期首仕掛品数量と当期投入数量の合計数量で除して平均単価を計算します。
- 1,200円+19,600円=20,800円
- 100個+1,500個=1,600個
- 直接材料費の平均単価=20,800円/1,600個=13.0円
そして、直接材料費の平均単価を期末仕掛品数量に乗じて、直接材料費の期末仕掛品原価を計算します。
- 直接材料費の期末仕掛品原価=13.0円×120個=1,560円
直接材料費の期首仕掛品原価と当期製造費用の合計から期末仕掛品原価を差し引けば、直接材料費の当期の完成品原価が求められます。
- 直接材料費の完成品原価
=1,200円+19,600円-1,560円=19,240円
加工費の計算
加工費の計算も、直接材料費の計算と基本的に同じですが、数量が異なる点に注意しなければなりません。
加工費の平均単価は、期首仕掛品原価と当期製造費用の合計額を期首仕掛品数量と当期投入数量の合計数量で除して計算します。
- 800円+40,780円=41,580円
- 30個+1,510個=1,540個
- 加工費の平均単価=41,580円/1,540個=27.0円
そして、加工費の期末仕掛品原価は、加工費の平均単価に期末仕掛品数量を乗じて計算します。
- 加工費の期末仕掛品原価=27.0円×60個=1,620円
加工費の期首仕掛品原価と当期製造費用の合計から期末仕掛品原価を差し引けば、加工費の当期の完成品原価が求められます。
- 加工費の完成品原価
=800円+40,780円-1,620円=39,960円
期末仕掛品原価と完成品原価の計算
以上より、期末仕掛品原価、完成品原価、完成品単位原価は以下のようになります。
- 期末仕掛品原価=1,620円+3,180円=4,800円
- 完成品原価=19,240円+39,960円=59,200円
- 完成品単位原価=59,200円/1,480個=40.0円