直接材料費の差異分析
原価計算基準46(二)では、直接材料費差異を以下のように規定しています。
直接材料費差異とは、標準原価による直接材料費と直接材料費の実際発生額との差額をいい、これを材料種類別に価格差異と数量差異とに分析する。
価格差異と数量差異
直接材料費差異は、価格差異と数量差異に分析できます。原価計算基準46(二)1、2では、価格差異と数量差異を以下のように規定しています。
1 価格差異とは、直接材料の標準消費価格と実際消費価格との差異に基づく直接材料費差異をいい、直接材料の標準消費価格と実際消費価格との差異に、実際消費数量を乗じて算定する。
2 数量差異とは、材料の標準消費数量と実際消費数量との差異に基づく直接材料費差異をいい、直接材料の標準消費数量と実際消費数量との差異に、標準消費価格を乗じて算定する。
上記を計算式で表すと以下のようになります。
- 価格差異=(標準消費価格-実際消費価格)×実際消費数量
- 数量差異=(標準消費数量-実際消費数量)×標準消費価格
直接材料費の実際発生額は、実際消費価格に実際消費数量を乗じた価額です。図示すると以下のようになります。
標準直接材料費は、標準消費価格に標準消費数量を乗じた価額です。そして、標準直接材料費と実際直接材料費の間の差異が直接材料費差異となります。直接材料費差異は、標準消費価格と実際消費価格との間の差異である価格差異と標準消費数量と実際消費数量との間の差異である数量差異に分析できます。
価格差異と数量差異の関係を図示すると以下のようになります。
3分法による分析
直接材料費差異は、価格差異と数量差異の他に混合差異も算定して、3分法による分析もできます。
3分法による分析での各差異の計算式は以下の通りです。
- 価格差異
=(標準消費価格-実際消費価格)×標準消費数量 - 数量差異
=(標準消費数量-実際消費数量)×標準消費価格 - 混合差異
=(標準消費価格-実際消費価格)×(実際消費数量-標準消費数量)
価格差異の計算では、通常は実際消費数量を用いますが、3分法では標準消費数量を用います。
すなわち、3分法における混合差異は、通常の分析方法における価格差異と3分法における価格差異の差額として計算されたものです。
一般には、混合差異は価格差異に含めて計算します。その理由は、原価管理で重視されるのが数量差異だからです。価格差異は、企業外部の事情によって生じた差異のため管理不能です。一方、数量差異は、企業内部の生産活動に起因して発生する差異なので、管理可能な差異です。
したがって、原価管理の視点からは、原価責任を問える数量差異を純粋な形で把握することが重要であり、混合差異は価格差異に含めて算定しても原価管理に大きな影響を与えません。
計算例
甲社は、標準原価計算を採用しています。当期の直接材料費の標準消費価格、標準消費数量、実際消費価格、実際消費数量は以下の通りです。
- 標準消費価格=300円
- 標準消費数量=2,000個
- 実際消費価格=310円
- 実際消費数量=2,150個
甲社は、直接材料費差異を価格差異と数量差異に分析しています。
直接材料費差異
直接材料費差異は、標準直接材料費と実際直接材料費との差として計算します。
- 標準直接材料費
=300円×2,000個=600,000円 - 実際直接材料費
=310円×2,150個=666,500円 - 直接材料費差異
=600,000円-666,500円=-66,500円(不利差異)
価格差異
価格差異は、標準消費価格と実際消費価格の差に実際消費数量を乗じて計算します。
- 価格差異
=(300円-310円)×2,150個=-21,500円(不利差異)
数量差異
数量差異は、標準消費価格を標準消費数量と実際消費数量の差に乗じて計算します。
- 数量差異
=300円×(2,000個-2,150個)=-45,000円(不利差異)
差異の確認
直接材料費差異は、価格差異と数量差異の合計です。計算式で表すと以下の通りです。
- 直接材料費差異=価格差異+数量差異
したがって、価格差異と数量差異が正しく計算されているかは、価格差異と数量差異の合計が直接材料費差異と一致することを確認すればわかります。
- 価格差異+数量差異=-21,500円+(-45,000円)=-66,500円
直接材料費差異-66,500円と一致したので、計算が正しいことが確認できました。
以上の計算を図示すると以下のようになります。