操業度差異に含まれる暦日差異の分析
製造間接費差異に含まれる操業度差異は、標準作業時間を基準とした3分法では、固定費率を標準作業時間と基準操業度との差に乗じて計算します。また、実際作業時間を基準とした3分法では、固定費率を実際作業時間と基準操業度との差に乗じて計算します。
標準作業時間または実際作業時間と基準操業度との間に発生した操業度差異は、当初予定していた操業度と標準作業時間または実際作業時間が異なっていた場合に発生します。
操業度差異は、生産設備を有効利用できなかったことの他に予定していた出勤日数と実際の出勤日数とが異なっていたことを原因として発生することもあります。
例えば、月間出勤日数を25日と予定していたところ、祝祭日があったなどの理由で実際の出勤日数が23日しかなかった場合、その差2日の作業時間が失われたことになり、操業度差異は不利差異として計算されます。
このように暦日の相違によって発生した操業度差異を暦日差異といいます。
計算例
ここでは、操業度差異に含まれる暦日差異の計算方法を具体例を用いて解説します。
計算の前提
甲社は、標準原価計算を採用しており、公式法変動予算に基づいて製造間接費を管理しています。
当期の予定作業日数は22日であり、正常操業度は220時間、 固定製造間接費予算額は99,000円です。
当期の実際作業時間は192時間、実際作業日数は20日でした。
操業度差異の計算
操業度差異を計算するためには、まず固定費率を算定しなければなりません。
- 固定費率
=99,000円/220時間=450円/時間
操業度差異は、実際作業時間と正常操業度との差として計算します。
- 操業度差異
=450円×(192時間-220時間)=-12,600円(不利差異)
暦日差異の計算
操業度差異に含まれる暦日差異を計算するには、1日の予定作業時間をまず計算します。
- 1日の予定作業時間
=220時間/22日=10時間/日
次に実際作業日数20日に10時間を乗じて、実際作業日数における予定作業時間を計算します。
- 実際作業日数における予定作業時間
=10時間×20日=200時間
暦日差異は、固定費率を実際作業日数における予定作業時間と正常操業度との差に乗じて計算します。
- 暦日差異
=450円×(200時間-220時間)=-9,000円(不利差異)
操業度差異-12,600円(不利差異)のうち-9,000円(不利差異)が暦日の相違によって発生した暦日差異です。
残りの-3,600円(不利差異)は、その他の原因で発生した操業度差異です。
賃率差異に含まれる暦日差異
暦日差異は、操業度差異だけでなく、直接労務費差異の賃率差異にも含まれる場合があります。
例えば、毎月の賃金手当総額を16万円、出勤日数を20日、1日の労働時間を8時間と決めていた場合、予定賃率は1,000円/時間になります。
- 予定賃率
=160,000円/20日/8時間=1,000円/時間
賃金手当が毎月固定で16万円支給されている場合、ある月の出勤日数が19日であれば、以下の計算から暦日差異は-8,000円(不利差異)になります。
- 暦日差異
=1,000円×8時間×(19日-20日)=-8,000円(不利差異)
上記の暦日差異は、予定賃率と実際賃率の差に実際作業時間を乗じた賃率差異と同額になります。
- 実際作業時間
=19日×8時間=152時間 - 実際賃率
=160,000円/152時間=1,052.63円 - 賃率差異
=(1,000円-1,052.63円)×152時間=-7,999.76円
≒-8,000円(不利差異)