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パーシャル・プランによる勘定記入例

ここでは、パーシャル・プランによる勘定記入を具体例を用いて解説します。

計算の前提

甲社は、標準原価計算を採用しており、勘定記入はパーシャル・プランで行っています。

当期の標準原価と実際原価の計算に必要な情報は以下の通りです。

直接材料費

  1. 標準消費量=1,000個
  2. 標準価格=30円/個
  3. 実際消費量=1,050個
  4. 実際価格=32円/個

直接材料費差異は、価格差異と数量差異に分析します。

直接労務費

  1. 標準作業時間=50時間
  2. 標準賃率=1,000円/時間
  3. 実際作業時間=53時間
  4. 実際賃率=1,020円/時間

直接労務費差異は、賃率差異と作業時間差異に分析します。

製造間接費

  1. 正常操業度=60時間
  2. 標準作業時間=50時間
  3. 変動費率=300円/時間
  4. 固定費率=200円/時間
  5. 実際作業時間=53時間
  6. 製造間接費実際発生額=27,000円

製造間接費差異は、実際作業時間を基準にした3分法で、予算差異、能率差異、操業度差異に分析します。

期首も期末も仕掛品はなく、当期投入分はすべて完成しています。

直接材料費の勘定記入

直接材料費の勘定記入は以下の通りです。


直接材料費

直接材料費勘定の借方には、材料の実際払出高33,600円(実際価格×実際消費量)を記入します。貸方には、仕掛品勘定に振替える実際原価33,600円を記入します。

価格差異は不利差異なので、価格差異勘定の借方に2,100円を記入します。相手勘定は仕掛品です。

  • 価格差異
    =(30円-32円)×1,050個=-2,100円(不利差異)

数量差異は不利差異なので、数量差異勘定の借方に1,500円を記入します。相手勘定は仕掛品です。

  • 数量差異
    =30円×(1,000個-1,050個)=-1,500円(不利差異)

直接労務費の勘定記入

直接労務費の勘定記入は以下の通りです。


直接労務費

直接労務費勘定の借方には、直接労務費の実際発生額54,060円(実際賃率×実際作業時間)を記入します。貸方には、仕掛品勘定に振替える実際原価54,060円を記入します。

賃率差異は不利差異なので、賃率差異勘定の借方に1,060円を記入します。相手勘定は仕掛品です。

  • 賃率差異
    =(1,000円-1,020円)×53時間=-1,060円(不利差異)

作業時間差異は不利差異なので、作業時間差異勘定の借方に3,000円を記入します。相手勘定は仕掛品です。

  • 作業時間差異
    =1,000円×(50時間-53時間)=-3,000円(不利差異)

製造間接費の勘定記入

製造間接費の勘定記入は以下の通りです。


製造間接費

製造間接費勘定の借方には、製造間接費の実際発生額27,000円を記入します。貸方には、仕掛品勘定に振替える実際原価27,000円を記入します。

予算差異は有利差異なので、予算差異勘定の貸方に900円を記入します。相手勘定は仕掛品です。

  • 予算差異
    =(300円×53時間+200円×60時間)-27,000円
    =900円(有利差異)

能率差異は不利差異なので、能率差異勘定の借方に1,500円を記入します。相手勘定は仕掛品です。

  • 能率差異
    =(300円+200円)×(50時間-53時間)=-1,500円(不利差異)

操業度差異は不利差異なので、操業度差異勘定の借方に1,400円を記入します。相手勘定は仕掛品です。

  • 操業度差異
    =200円×(53時間-60時間)=-1,400円(不利差異)

仕掛品の勘定記入

仕掛品の勘定記入は以下の通りです。


仕掛品

仕掛品勘定の借方には、実際原価を記入します。したがって、直接材料費33,600円、直接労務費54,060円、製造間接費27,000円を記入します。

仕掛品勘定の貸方には、製品勘定に振替える完成品の標準原価を記入します。振替額は、直接材料費30,000円、直接労務費50,000円、製造間接費25,000円の合計105,000円です。

  • 標準直接材料費=30円×1,000個=30,000円
  • 標準直接労務費=1,000円×50時間=50,000円
  • 標準製造間接費=(300円+200円)×50個=25,000円

発生した原価差異は、仕掛品勘定から各原価差異勘定に振替えられます。


パーシャル・プランでは、仕掛品勘定に各原価差異が記入されます。したがって、直接材料費、直接労務費、製造間接費の各勘定では、原価差異の記入は行われません