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標準原価の設定

標準原価の設定に際しては、直接材料費や直接労務費といった直接費は単位当たり標準数量に標準価格を乗じて算定できるのに対し、製造間接費は通常、一定期間の予算額として算定します。

原価標準と標準原価

標準原価計算においては、原価標準標準原価の似たような2つの概念があります。

原価標準は、製品1単位を生産するのに合理的に必要とされる原価のことです。

一方の標準原価は、原価標準に実際生産量を乗じて計算した原価のことです。

したがって、原価標準は製品の製造以前に設定された事前原価であるのに対して、標準原価は実際生産量が確定した後に計算される事後原価という違いがあります。

標準原価設定の留意点

標準原価を設定する際は、生産方法が標準化されていること、科学的方法で設定することに留意しなければなりません。

生産方法が標準化されていること

標準原価を設定する際には、製品の生産方法が標準化されていることが必要になります。

使用する原材料の種類や品質、加工方法、作業方式や手順、使用する機械や工具、各作業の従事者の等級などについて、一定の前提が設けられていなければ、適切な標準原価を設定できません。

科学的方法で設定すること

標準原価を原価管理や財務諸表作成に役立てるためには、科学的方法によって標準原価を設定する必要があります。

科学的方法で設定されていない場合には、原価管理上の達成目標や原価能率の測定の尺度として意味をなさず、関係者に受け入れられません。

また、財務諸表に計上される価額が、真実の原価として認められるためには、科学的方法で設定した標準原価であることが絶対的に必要です。

標準原価の算定

標準原価は、直接材料費、直接労務費等の直接費および製造間接費について、さらに製品原価について算定します。

原価要素の標準は、原則として物量標準と価格標準との両面を考慮して算定します。

標準直接材料費

原価計算基準41(一)では、標準直接材料費の算定について以下のように規定されています。

1 標準直接材料費は、直接材料の種類ごとに、製品単位当たりの標準消費量と標準価格とを定め、両者を乗じて算定する。
2 標準消費量については、製品の生産に必要な各種素材、部品等の種類、品質、加工の方法および順序等を定め、科学的、統計的調査により製品単位当たりの各種材料の標準消費量を定める。標準消費量は、通常生ずると認められる程度の減損、仕損等の消費余裕を含む。
3 標準価格は、予定価格又は正常価格とする。

標準直接材料費は、以下の計算式で算定します。

  • 標準直接材料費=標準消費量×標準価格

標準消費量は、標準的な歩留計算、製作品の設計図、試作、過去の実績データを活用して科学的に決定します。

標準価格は、予定価格または正常価格として決定します。

標準直接労務費

原価計算基準41(二)では、標準直接労務費の算定について以下のように規定しています。

1 標準直接労務費は、直接作業の区分ごとに、製品単位当たりの直接作業の標準時間と標準賃率とを定め、両者を乗じて算定する。
2 標準直接作業時間については、製品の生産に必要な作業の種類別、使用機械工具、作業の方法および順序、各作業に従事する労働の等級等を定め、作業研究、時間研究その他経営の実績に応ずる科学的、統計的調査により製品単位当たりの各区分作業の標準時間を定める。標準時間は、通常生ずると認められる程度の疲労、身体的必要、手待等の時間的余裕を含む。
3 標準賃率は、予定賃率又は正常賃率とする。

標準直接労務費は、以下の計算式で算定します。

  • 標準直接労務費=標準直接作業時間×標準賃率

直接作業時間は、動作時間研究、試作、過去の経験に基づく見積もりや過去の実績データを活用して科学的に決定します。

標準賃率は、予定賃率または正常賃率によります。

なお、直接工賃金でも、装置産業に見られるように賃金の支払形態が固定的であったり、作業内容が監視的で作業量と生産量との間に相関関係が認められない業種では、直接工賃金は間接費化します。このような業種では、製造間接費と同様の方法で標準直接労務費が設定されます。

製造間接費の標準

原価計算基準41(三)では、製造間接費の標準の設定について、以下のように規定しています。

製造間接費の標準は、これを部門別(又はこれを細分した作業単位別、以下これを「部門」という。)に算定する。部門別製造間接費の標準とは、一定期間において各部門に発生すべき製造間接費の予定額をいい、これを部門間接費予算として算定する。

製造間接費は、直接費のように製品の生産に跡付けることができません。また、その発生額が生産量に比例しない固定費としての性格を有しています。

そのため、製造間接費の標準は、製品単位当たりではなく、予算として部門別に算定されます。

標準製品原価

原価計算基準41(四)では、標準製品原価の算定について以下のように規定しています。

標準製品原価は、製品の一定単位につき標準直接材料費、標準直接労務費等を集計し、これに標準間接費配賦率に基づいて算定した標準間接費配賦額を加えて算定する。標準間接費配賦率は、固定予算算定の基礎となる操業度ならびにこの操業度における標準間接費を基礎として算定する。
標準原価計算において加工費の配賦計算を行なう場合には、部門加工費の標準を定める。その算定は、製造間接費の標準の算定に準ずる。

標準製品原価(原価標準)は、製品の一定単位に標準直接材料費、標準直接労務費などの標準直接費を集計し、これに標準製造間接費配賦額を加えて算定します。

当該標準製品原価に基づいて、標準製品原価表(標準原価票、標準原価カード)を作成します。

なお、標準直接費は製品単位当たりに算定されますが、製造間接費配賦額は、標準配賦率に各製品の標準配賦基準数値を乗じて算定します。

標準原価の改訂

原価計算基準42では、標準原価の改訂について以下のように規定しています。

標準原価は、原価管理のためにも、予算編成のためにも、また、たな卸資産価額および売上原価算定のためにも、現状に即した標準でなければならないから、常にその適否を吟味し、機械設備、生産方式等生産の基本条件ならびに材料価格、賃率等に重大な変化が生じた場合には、現状に即するようにこれを改訂する。

標準原価を原価管理、予算管理、財務諸表作成にとって効果的なものとするためには、現状に即した標準原価に保つことが必要です。

標準原価の改訂が必要になるのは、以下のような場合です。

  1. 機械設備や生産方式など、生産の基本条件に大きな変化があった場合
  2. 材料価格、賃率などに大きな変化があった場合

「1」の場合は、主に材料の標準消費量や直接工の標準作業時間など消費量に影響を与えます。一方、「2」の変化は標準価格に影響を与えます。

標準原価は、年度末に先立って年1回か2回、定期的に改訂する必要があります。

期中に異常な消費量、一時的な価格の変動があった場合には、標準原価を改訂しないのが一般的です。期中の標準原価の改訂は、原価差額の処理を複雑にするので望ましくありません。ただし、期中に重大な変化があった場合には、標準原価の改訂が必要になる場合もあります。


標準原価の指示

原価計算基準43では、標準原価の指示について以下のように規定しています。

標準原価は、一定の文書に表示されて原価発生について責任をもつ各部署に指示されるとともに、この種の文書は、標準原価会計機構における補助記録となる。標準原価を指示する文書の種類、記載事項および様式は、経営の特質によって適当に定めるべきであるが、たとえば次のようである。
(一)標準製品原価表
標準製品原価表とは、製造指図書に指定された製品の一定単位当たりの標準原価を構成する各種直接材料費の標準、作業種類別の直接労務費の標準および部門別製造間接費配賦額の標準を数量的および金額的に表示指定する文書をいい、必要に応じ材料明細表、標準作業表等を付属させる。
(二)材料明細表
材料明細表とは、製品の一定単位の生産に必要な直接材料の種類、品質、その標準消費数量等を表示指定する文書をいう。
(三)標準作業表
標準作業表とは、製品の一定単位の生産に必要な区分作業の種類、作業部門、使用機械工具、作業の内容、労働等級、各区分作業の標準時間等を表示指定する文書をいう。
(四)製造間接費予算表
製造間接費予算表は、製造間接費予算を費目別に表示指定した費目別予算表と、これをさらに部門別に表示指定した部門別予算表とに分けられ、それぞれ予算期間の総額および各月別予算額を記載する。部門別予算表において、必要ある場合には、費目を変動費と固定費又は管理可能費と管理不能費とに区分表示する。

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