標準原価の種類
標準原価計算における標準原価は、改訂の頻度、標準の厳格度、計算の範囲を基準に分類することができます。
改訂の頻度による分類
標準原価を改訂の頻度で分類すると、当座標準原価と基準標準原価に区分できます。
当座標準原価
当座標準原価は、必要に応じて毎期改訂される標準原価です。
作業条件や価格要件の変化を反映させた当座標準原価は、標準原価計算で一般に用いられる標準原価を指します。
基準標準原価
基準標準原価は、期待される原価と実際原価との比較尺度として設定される標準原価です。
経営の基礎条件に変化がなければ、例え価格が変わっても改訂されることはありません。
標準の厳格度による分類
原価計算基準4(一)では、標準原価の設定に際し、どの程度厳格にするかによって、理想標準原価、現実的標準原価、正常標準原価に区分しています。
理想標準原価
理想標準原価は、技術的に達成可能な最大操業度のもとにおいて最高の能率を表す最低の原価をいいます。
理想標準原価では、財貨の消費における減損、仕損、遊休時間に対する余裕率を許容しません。そのため、一般に達成不能な標準であり、妥当な標準原価とは言えません。
現実的標準原価
現実的標準原価は、良好な能率のもとにおいて、その達成が期待されうる標準原価をいいます。
通常生ずると認められる程度の減損、仕損、遊休時間等の余裕率を含む原価であり、かつ、比較的短期における予定操業度および予定価格を前提として決定され、これら諸条件の変化に伴い、しばしば改訂されます。そのため、現実的標準原価は、原価管理に最も適しており、棚卸資産価額の算定や予算の編成のために用いられます。
また、達成しようとすれば達成できる標準であることから、モチベーション管理にも役立ちます。
なお、現実的標準原価は、達成可能高能率標準原価や期待実際標準原価とも言われます。
正常標準原価
正常原価は、経営における異常な状態を排除し、経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し、これに将来のすう勢を加味した正常能率、正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいいます。
経済状態が安定している場合には、棚卸資産価額の算定に最も適するだけでなく、原価管理のための標準としても用いられます。
計算の範囲による分類
計算の対象とする原価をどの範囲にするかにより、標準全部原価と標準直接原価に区分できます。
標準全部原価
標準全部原価は、全ての製造原価を対象にした標準原価です。原価計算制度における標準原価は、標準全部原価を指します。
標準直接原価
標準直接原価は、製造原価のうち変動費(直接費)についてのみ設定する標準原価です。標準直接原価計算で用いられます。