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注記事項

収益認識に関する会計基準では、重要な会計方針の注記と収益認識に関する注記について定めています。

重要な会計方針の注記

顧客との契約から生じる収益に関する重要な会計方針として、次の項目を注記しなければなりません(収益認識に関する会計基準第80-2項)。


  1. 企業の主要な事業における主な履行義務の内容
  2. 企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)

上記以外にも、重要な会計方針に含まれると判断した内容については、重要な会計方針として注記します(同会計基準第80-3項)。

収益認識に関する注記

収益認識に関する注記における開示目的は、顧客との契約から生じる収益およびキャッシュ・フローの性質、金額、時期および不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示することにあります(収益認識に関する会計基準第80-4項)。

収益認識に関する注記として、以下の項目を注記します(同会計基準第80-5)。


  1. 収益の分解情報
  2. 収益を理解するための基礎となる情報
  3. 当期および翌期以降の収益の金額を理解するための情報

上記の各注記事項のうち、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項については、記載しないことができます。

どの注記事項にどの程度の重点を置くべきか、また、どの程度詳細に記載するのかは、開示目的に照らして判断します。重要性に乏しい詳細な情報を大量に記載したり、特徴が大きく異なる項目を合算したりすることにより有用な情報が不明瞭とならないように、注記は集約または分解する必要があります(同会計基準第80-6項)。

また、重要な会計方針として注記している内容は、収益認識に関する注記として記載しないことができます(同会計基準第80-8項)。収益認識に関する注記として記載する内容として、財務諸表における他の注記事項に含めて記載している場合には、当該他の注記事項を参照することができます(同会計基準第80-9項)。

なお、「収益の分解情報」「収益を理解するための基礎となる情報」「当期および翌期以降の収益の金額を理解するための情報」に関する注記を記載するにあたっては、それぞれの注記事項の区分にしたがって注記事項を記載する必要はありません(同会計基準第80-7項)。

収益の分解情報

当期に認識した顧客との契約から生じる収益を、収益およびキャッシュ・フローの性質、金額、時期および不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解して注記します(収益認識に関する会計基準第80-10項)。

また、収益の分解情報とセグメント情報の各報告セグメントについて開示する売上高との間の関係を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を注記します(同会計基準第80-11項)。

収益認識に関する会計基準の適用指針第106-5項では、収益を分解するための区分の例として以下を挙げています。


  1. 財またはサービスの種類(例えば、主要な製品ライン)
  2. 地理的区分(例えば、国または地域)
  3. 市場または顧客の種類(例えば、政府と政府以外の顧客)
  4. 契約の種類(例えば、固定価格と実費精算契約)
  5. 契約期間(例えば、短期契約と長期契約)
  6. 財またはサービスの移転の時期(例えば、一時点で顧客に移転される財またはサービスから生じる収益と一定の期間にわたり移転される財またはサービスからの収益)
  7. 販売経路(例えば、消費者に直接販売される財と仲介業者を通じて販売される財)

収益の分解情報の注記例を以下に示します。


収益の分解情報の注記例

収益を理解するための基礎となる情報

顧客との契約が、財務諸表に表示している項目または収益認識に関する注記における他の注記事項とどのように関連しているのかを示す基礎となる情報として、次の事項を注記します(収益認識に関する会計基準第80-12項)。


  1. 契約および履行義務に関する情報ステップ1およびステップ2
  2. 取引価格の算定に関する情報ステップ3
  3. 履行義務への配分額の算定に関する情報ステップ4
  4. 履行義務の充足時点に関する情報ステップ5
  5. 収益認識に関する会計基準の適用における重要な判断

契約および履行義務に関する情報

収益として認識する項目がどのような契約から生じているのかを理解するための基礎となる情報を注記します。この情報には、次の事項が含まれます(収益認識に関する会計基準第80-13項)。


  1. 履行義務に関する情報
  2. 重要な支払条件に関する情報

履行義務に関する情報を注記するにあたっては、履行義務の内容(企業が顧客に移転することを約束した財またはサービスの内容)を記載します。また、例えば、以下の内容が契約に含まれる場合には、その内容を注記します(同会計基準第80-14項)。


  1. 財またはサービスが他の当事者により顧客に提供されるように手配する履行義務(すなわち、企業が他の当事者の代理人として行動する場合)
  2. 返品、返金およびその他の類似の義務
  3. 財またはサービスに対する保証および関連する義務

重要な支払条件に関する情報を注記するにあたっては、例えば、以下の内容を記載します(同会計基準第80-15項)。


  1. 通常の支払期限
  2. 対価に変動対価が含まれる場合のその内容
  3. 変動対価の見積りが通常制限される場合のその内容
  4. 契約に重要な金融要素が含まれる場合のその内容

取引価格の算定に関する情報

取引価格の算定方法について理解できるよう、取引価格を算定する際に用いた見積方法、インプットおよび仮定に関する情報を注記します。例えば、以下の内容を記載します(収益認識に関する会計基準第80-16)。


  1. 変動対価の算定
  2. 変動対価の見積りが制限される場合のその評価
  3. 契約に重要な金融要素が含まれる場合の対価の額に含まれる金利相当分の調整
  4. 現金以外の対価の算定
  5. 返品、返金およびその他の類似の義務の算定

履行義務への配分額の算定に関する情報

取引価格の履行義務への配分額の算定方法について理解できるよう、取引価格を履行義務に配分する際に用いた見積方法、インプットおよび仮定に関する情報を注記します。例えば、以下の内容を記載します(収益認識に関する会計基準第80-17)。


  1. 約束した財またはサービスの独立販売価格の見積り
  2. 契約の特定の部分に値引きや変動対価の配分を行っている場合の取引価格の配分

履行義務の充足時点に関する情報

履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)の判断および当該時点における会計処理の方法を理解できるよう、次の事項を注記します(収益認識に関する会計基準第80-18)。


  1. 履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)
  2. 一定の期間にわたり充足される履行義務について、収益を認識するために使用した方法および当該方法が財またはサービスの移転の忠実な描写となる根拠
  3. 一時点で充足される履行義務について、約束した財またはサービスに対する支配を顧客が獲得した時点を評価する際に行った重要な判断

収益認識に関する会計基準の適用における重要な判断

収益認識に関する会計基準を適用する際に行った判断および判断の変更のうち、顧客との契約から生じる収益の金額および時期の決定に重要な影響を与えるものを注記します(収益認識に関する会計基準第80-19項)。

当期および翌期以降の収益の金額を理解するための情報

当期および翌期以降の収益の金額を理解するための情報として、以下を注記します。


  1. 契約資産および契約負債の残高等
  2. 残存履行義務に配分した取引価格

契約資産および契約負債の残高等

履行義務の充足とキャッシュ・フローの関係を理解できるよう、次の事項を注記します(収益認識に関する会計基準第80-20項)。


  1. 顧客との契約から生じた債権契約資産および契約負債の期首残高および期末残高(区分して表示していない場合)
  2. 当期に認識した収益の額のうち期首現在の契約負債残高に含まれていた額
  3. 当期中の契約資産および契約負債の残高の重要な変動がある場合のその内容
  4. 履行義務の充足の時期が通常の支払時期にどのように関連するのか並びにそれらの要因が契約資産および契約負債の残高に与える影響の説明

また、過去の期間に充足(または部分的に充足)した履行義務から、当期に認識した収益(例えば、取引価格の変動)がある場合には、当該金額を注記します。

残存履行義務に配分した取引価格

既存の契約から翌期以降に認識することが見込まれる収益の金額および時期について理解できるよう、残存履行義務に関して次の事項を注記します(収益認識に関する会計基準第80-21項)。


  1. 当期末時点で未充足(または部分的に未充足)の履行義務に配分した取引価格の総額
  2. 「1」にしたがって注記した金額を、企業がいつ収益として認識すると見込んでいるのか、次のいずれかの方法により注記します。
    ①残存履行義務の残存期間に最も適した期間による定量的情報を使用した方法
    ②定性的情報を使用した方法

なお、以下のいずれかの条件に該当する場合には、上記の注記に含めないことができます(同会計基準第80-22項)。


  1. 履行義務が、当初に予想される契約期間が1年以内の契約の一部である。
  2. 履行義務の充足から生じる収益を請求する権利を有している金額(アウトプット法)で認識している。
  3. 次のいずれかの条件を満たす変動対価である。
    ①売上高または使用量に基づくロイヤルティ
    ②変動対価の配分の要件にしたがって、完全に未充足の履行義務(あるいは一連の別個の財またはサービスにしたがって識別された単一の履行義務に含まれる1つの別個の財またはサービスのうち、完全に未充足の財またはサービス)に配分される変動対価

顧客との契約から受け取る対価の額に、取引価格に含まれない変動対価の額等、取引価格に含まれず、結果として、契約資産および契約負債の残高等の注記、残存履行義務に配分した取引価格の注記に含めていないものがある場合には、その旨を注記します(同会計基準第80-23項)。

第80-22項のいずれかの条件に該当するため、契約資産および契約負債の残高等の注記、残存履行義務に配分した取引価格の注記に含めていないものがある場合には、第80-22項のいずれの条件に該当するか、および契約資産および契約負債の残高等の注記、残存履行義務に配分した取引価格の注記に含めていない履行義務の内容を注記します(同会計基準第80-24項)。

第80-22項(3)のいずれかの条件に該当するため、契約資産および契約負債の残高等の注記、残存履行義務に配分した取引価格の注記に含めていないものがある場合には、次の事項を注記します(同会計基準第80-24項)。


  1. 残存する契約期間
  2. 契約資産および契約負債の残高等の注記、残存履行義務に配分した取引価格の注記に含めていない変動対価の概要(例えば、変動対価の内容およびその変動性がどのように解消されるのか)

工事契約等から損失が見込まれる場合

工事契約および受注制作のソフトウェアに関しては、次の事項を注記します(収益認識に関する会計基準の適用指針第106-9項および第106-10項)。


  1. 当期の工事損失引当金繰入額
  2. 同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されることとなる場合には、次の①または②のいずれかの額(該当する工事契約が複数存在する場合には、その合計額)
    ①棚卸資産と工事損失引当金を相殺せずに両建てで表示した場合
    その旨および当該棚卸資産の額のうち工事損失引当金に対応する額
    ②棚卸資産と工事損失引当金を相殺して表示した場合
    その旨および相殺表示した棚卸資産の額

連結財務諸表を作成している場合

連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、表示の定めを適用しないことができます(収益認識に関する会計基準第80-25項)。

収益認識に関する注記については、「収益の分解情報」と「当期および翌期以降の収益の金額を理解するための情報」について注記しないことができます(同会計基準第80-26項)。また、「収益を理解するための基礎となる情報」の注記を記載するにあたって、連結財務諸表における記載を参照することができます(同会計基準第80-27項)。