顧客による検収
企業は、資産に対する支配を顧客に移転することにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識します(収益認識に関する会計基準第39項)。
資産に対する支配を顧客に移転した時点を決定する指標として、同会計基準第40項(5)で「顧客が資産を検収したこと」が挙げられています。
したがって、顧客が財またはサービスの検収を完了するまで、当該財またはサービスの支配が顧客に移転しないため、それ以前に企業が収益を認識することはできません。
出荷基準等の取り扱い
契約において合意された仕様に従っていることにより財またはサービスに対する支配が顧客に移転されたことを客観的に判断できる場合には、顧客の検収は、形式的なものであり、顧客による財またはサービスに対する支配の時点に関する判断に影響を与えません。例えば、顧客の検収が、所定の大きさや重量を確認するものである場合には、それらの大きさや重量は顧客の検収前に企業が判断できます(収益認識に関する会計基準の適用指針第80項)。
そのため、商品または製品の国内の販売において、出荷時から当該商品または製品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品または製品の支配が顧客に移転される時までの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができます(同適用指針第98項)。
なお、顧客の検収前に収益が認識される場合には、他の残存履行義務があるかどうかを判定しなければなりません(同適用指針第81項)。
顧客に移転する財またはサービスが契約において合意された仕様に従っていると客観的に判断することができない場合には、顧客の検収が完了するまで、顧客は当該財またはサービスに対する支配を獲得しません(同適用指針第82項)。したがって、この場合には、企業は、出荷基準や着荷基準で収益を認識できません。
試用販売
「企業会計原則注解(注6)(2)」では、試用販売は、「得意先が買取りの意思を表示することによって売上が実現する」ことから、買取意思表示基準で収益を認識することを定めています。
収益認識に関する会計基準の適用指針第83項でも、商品または製品を顧客に試用目的で引き渡し、試用期間が終了するまで顧客が対価の支払を約束していない場合、顧客が商品または製品を検収するまであるいは試用期間が終了するまで、当該商品または製品に対する支配は顧客に移転しないとしていることから、顧客が検収するまで収益を認識することはできません。