自社ポイントを顧客に付与した場合の会計処理
ここでは、自社ポイントを顧客に付与した場合の会計処理について、具体例を用いて解説します。
前提条件
- 甲社(3月決算会社)は、甲社が運営する店舗で顧客が買い物をするたびにポイントを付与しています。ポイントの付与率は100円につき1ポイントです。顧客は、次回以降の買い物の際にポイントを使用することができ、1ポイント当たり1円の値引きを受けられます。
- 当該ポイントは、契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するものであるため、甲社は、顧客へのポイントの付与により履行義務が生じると結論づけました(収益認識に関する会計基準の適用指針第48項)。
- ポイントの有効期限は、ポイントを付与した日の3年後の月末です。なお、ポイントの失効率は3%と見積もっています。
- x1年6月22日に顧客が甲社の運営する店舗で商品を10,000円購入しました。対価は現金で受け取っています。顧客に付与したポイントは100ポイント(100円相当)です。
会計処理
取引価格の配分
甲社は、顧客から受け取った対価10,000円を商品とポイントの独立販売価格の比率で配分します。
商品の独立販売価格は10,000円ですが、ポイントの独立販売価格は収益認識に関する会計基準の適用指針第50項にしたがい、顧客により使用される可能性を考慮して見積らなければなりません。
顧客に付与したポイントは100ポイント(100円相当)、ポイント失効率は3%なので、以下の計算よりポイントの独立販売価格は97円になります。
- ポイントの独立販売価格
=付与したポイントの価格×(1-失効率)
=100円×(1-0.03)
=97円
したがって、顧客から受け取った対価10,000円は、商品の独立販売価格10,000円と付与したポイントの独立販売価格97円の比率で配分します。
- 商品
=10,000円×10,000円/(10,000円+97円)
=9,904円 - ポイント
=10,000円×97円/(10,000円+97円)
=96円
上記の計算を表にすると以下の通りです。
x1年6月22日
商品9,904円について収益を認識し、ポイント96円について契約負債を認識します。
消費税を加味した会計処理
消費税を加味した会計処理も紹介しておきます。なお、消費税率は10%とし、税込み価格は11,000円(消費税は1,000円)、付与したポイントは100ポイントとします。
課税売上げの対価は、売上高9,904円と契約負債96円を合計した10,000円になります。課税売上げに係る消費税額は1,000円です。
したがって、消費税を加味した会計処理は以下の通りです。
自社ポイントを付与した場合の売上高、契約負債、消費税の関係を図示すると以下のようになります。