重要な権利ではない他社ポイントを顧客に付与した場合の会計処理
ここでは、重要な権利ではない他社ポイントを顧客に付与した場合の会計処理について、具体例を用いて解説します。
前提条件
- 甲社(3月決算会社)は、甲社が運営する店舗で顧客が買い物をするたびにR社が発行しているポイント(他社ポイント)を付与しています。R社ポイントの付与率は100円につき1ポイントです。顧客は、次回以降の買い物の際にR社ポイントを使用することができ、1ポイント当たり1円の値引きを受けられます。また、R社ポイントは、R社ポイント・プログラムに参加している企業の店舗でも使用可能です。
- R社ポイントは、甲社から見て契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するものではないと判断し、甲社は、顧客へのR社ポイントの付与により履行義務が生じないと結論づけました(収益認識に関する会計基準の適用指針第48項)。
- ポイントの有効期限は、ポイントを付与した日の1年後の月末です。ただし、ポイント有効期限は、ポイントの付与、ポイントの使用、買い物のいずれかがあった日から自動的に1年後の月末に延長されます。なお、ポイントの失効率は1%と見積もっています。
- 甲社は、顧客にR社ポイントを付与した翌月末にR社に対して付与したR社ポイント分の代金を支払います。
- x1年10月18日に顧客が甲社の運営する店舗で商品を10,000円購入しました。対価は現金で受け取っています。顧客に付与したR社ポイントは100ポイント(100円相当)です。
- x1年11月30日に甲社は、顧客に付与したR社ポイント100ポイントについて、R社に100円を支払いました。
会計処理
付与した他社ポイントの処理
甲社にとって、R社ポイントを顧客に付与することは重要な権利を提供しておらず、また、顧客に付与する前にR社ポイントも支配していません。そのため、甲社には、顧客に付与したR社ポイントから履行義務は生じず、契約負債は認識しません。
また、顧客に付与したR社ポイントは、第三者のために回収する額(収益認識に関する会計基準第47項)に該当するので、取引価格から除外します。
x1年10月18日
顧客から受け取った10,000円のうち、100円はR社ポイント100ポイントに対応する部分なので未払金を計上し、残額9,900円について収益を認識します。
x1年11月30日
R社に100円を支払ったので、未払金の消滅を認識します。
R社の会計処理
参考にR社の会計処理も示しておきます。R社は、甲社が顧客に付与したR社ポイントについて収益を認識します。
消費税を加味した会計処理
消費税を加味した会計処理についても解説しておきます。なお、消費税率は10%とし、消費税部分についてはR社ポイントを付与しないものとします。
x1年10月18日
売上高9,900円とR社に対する未払金100円の合計10,000円に対し、1,000円の仮受消費税を計上します。
- 仮受消費税
=(9,900円+100円)×10%
=1,000円
したがって、会計処理は以下の通りです。
売上高、未払金、消費税の関係を図示すると以下のようになります。
上記の会計処理は、他社ポイント相当額の支払部分を課税対象外取引(不課税取引)として処理しています。他社ポイントの付与を課税資産の譲渡等と扱い課税取引に該当するとした場合には、以下のように処理します。
仮払消費税9円は、未払金に計上した他社ポイント100円(税込)に対応するものです。
- 仮払消費税
=100円/110%×10%
=9円
したがって、ポイントの税抜価格は91円(100円-9円)となり、顧客から受け取った税抜対価10,000円から91円を差し引いた9,909円が売上高(税抜)となります。
x1年11月30日
R社に100円を支払ったので、未払金の消滅を認識します。
R社の会計処理
参考にR社の会計処理も示しておきます。
ポイントの付与を課税対象外取引とした場合は、消費税を加味しない場合の会計処理と同じになります。
ポイントの付与を課税取引とした場合、R社は、甲社が顧客に付与したR社ポイント91円(税抜)について収益を認識し、仮受消費税9円を計上します。