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加盟店が代理人に該当する場合の他社ポイントの会計処理

ここでは、加盟店が代理人に該当する場合の他社ポイントの会計処理について、具体例を用いて解説します。

前提条件

  1. 甲社(3月決算会社)は、甲社が運営する店舗で顧客が買い物をするたびにP社が発行しているポイント(他社ポイント)を付与しています。P社ポイントの付与率は100円につき1ポイントです。顧客は、次回以降の買い物の際にP社ポイントを使用することができ、1ポイント当たり1円の値引きを受けられます。また、P社ポイントは、P社ポイント・プログラムに参加している企業の店舗でも使用可能です。

  2. P社ポイントは、契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するものであるため、甲社は、顧客へのP社ポイントの付与により履行義務が生じると結論づけました(収益認識に関する会計基準の適用指針第48項)。

  3. 甲社は、P社ポイントを顧客に移転する前に支配しておらず、P社に対して顧客にP社ポイントを付与するよう手配する義務を負っているのみであり、P社ポイントの付与においては代理人であると判断しています(同適用指針第40項および第42項)。

  4. P社ポイントの有効期限は、P社ポイントを付与した日の1年後の月末です。ただし、P社ポイントの有効期限は、ポイントの付与、ポイントの使用、買い物のいずれかがあった日から自動的に1年後の月末に延長されます。なお、P社ポイントの失効率は1%と見積もっています。

  5. 甲社は、顧客にP社ポイントを付与した翌月末にP社に対して付与したP社ポイント1ポイントにつき0.9円を支払い、0.1円を手数料として受け取ります。

  6. x2年1月6日に顧客が甲社の運営する店舗で商品を30,000円購入しました。対価は現金で受け取っています。顧客に付与したP社ポイントは300ポイント(300円相当)です。

  7. x2年2月28日に甲社は、顧客に付与したP社ポイント300ポイントについて、P社に手数料を差し引いた270円を支払いました。

会計処理

付与した他社ポイントの処理

甲社にとって、P社ポイントを顧客に付与することは重要な権利を提供するものですが、P社の義務は、P社に対して顧客にP社ポイントを付与するよう手配することだけなので、甲社はP社ポイントの付与については代理人に当たります。

また、顧客に付与したP社ポイントは、第三者のために回収する額(収益認識に関する会計基準第47項)に該当しますが、1ポイントにつき0.1円を手数料として甲社が受け取るので、1ポイントにつき0.9円を取引価格から除外します。

取引価格の配分

商品とP社ポイントに配分

商品の独立販売価格は30,000円、P社ポイントの独立販売価格は300円なので、顧客から受け取った代金30,000円を独立販売価格の比率で、商品とP社ポイントに配分します。


  • 商品
    =30,000円×30,000円/(30,000円+300円)
    =29,703円

  • ポイント
    =30,000円×300円/(30,000円+300円)
    =297円

上記の計算を表にすると以下の通りです。

取引価格の配分

P社ポイント部分を未払金と手数料収入に配分

甲社は、P社に対して1ポイントにつき0.9円を支払わなければならないので、300ポイントの付与に対しては270円を支払う義務があり、これを未払金に計上します。


  • 未払金
    =300ポイント×0.9円
    =270円

したがって、P社ポイントに配分した297円から未払金270円を差し引いた27円が、甲社の手数料収入になります。


  • 手数料収入
    =297円-270円
    =27円

x2年1月6日

P社に対する支払額270円について未払金、商品29,703円および甲社が受け取る手数料27円について収益を認識します。

x2年1月6日の会計処理

x2年2月28日

P社に対して270円を支払ったので、未払金の消滅を認識します。

x2年2月28日の会計処理

消費税を加味した会計処理

消費税を加味した会計処理についても解説しておきます。なお、消費税率は10%とし、消費税部分についてはP社ポイントを付与しないものとします。また、P社ポイントの付与は課税取引に該当するものとします。

収益認識会計基準を適用しない場合

まず、収益認識に関する会計基準を適用しない場合の会計処理を説明します。

商品について売上高を計上

顧客から商品の代金33,000円(税込)を受け取っているので、売上高30,000円、仮受消費税3,000円を計上します。

x2年1月6日 課税取引(商品について売上高を計上)

付与した他社ポイントについて販管費を計上

次に付与したP社ポイント300円相当(税込)について販管費を計上します。


  • 販管費
    =300円/110%×100%
    =273円

  • 仮払消費税
    =300円/110%×10%
    =27円

x2年1月6日 課税取引(P社ポイントについて販管費を計上)

P社から受け取る手数料について売上高を計上

最後に付与したP社ポイントについて、10%分の手数料を受け取るので売上高を計上します。なお、相手勘定は未払金とします。


  • 売上高
    =300円×10%/110%×100%
    =27円

  • 仮受消費税
    =27円×10%
    =3円

x2年1月6日 課税取引(P社手数料について売上高を計上)

収益認識会計基準を適用した場合

上記の収益認識会計基準を適用しない場合の会計処理を収益認識会計基準を適用した会計処理に修正していきます。

売上高と販管費の相殺

借方に計上した販管費273円を売上高と相殺します。

x2年1月6日 課税対象外取引(売上高と販管費の相殺)

ここまでの会計処理をまとめると以下のようになります。

x2年1月6日の仕訳のまとめ

取引価格の配分

消費税は第三者のために回収する額(収益認識に関する会計基準第47項)になるので、顧客から受け取った33,000円から2,976円(3,003円-27円)を差し引いた30,024円を商品とP社ポイントに独立販売価格の比率で配分します。


  • 商品
    =30,024円×30,000円/(30,000円+300円)
    =29,727円

  • ポイント
    =30,024円×300円/(30,000円+300円)
    =297円

上記の計算を表にすると以下の通りです。

取引価格の配分

ポイントに配分した297円のうち270円はP社に対する未払金なので、差額27円を手数料収入とします。

したがって、売上高は29,727円、手数料収入は27円、未払金は270円になります。

収益認識会計基準を適用しない場合の未払金は270円だったので、収益認識会計基準を適用した場合の修正はありません。

収益認識会計基準を適用しない場合の売上高は29,754円だったので、収益認識会計基準を適用した場合の売上高29,727円に修正するために差額27円を手数料収入に振り替えます。

x2年1月6日 課税対象外取引(売上高から手数料収入に振替)

以上より、収益認識会計基準を適用した場合の会計処理をまとめると以下のようになります。

x2年1月6日の仕訳のまとめ(収益認識会計基準)

なお、x2年2月28日の会計処理は、消費税を加味しない場合の会計処理と同じです。

消費税の留意点

ここで示した他社ポイントの消費税の処理は一例を示したものです。ポイント・プログラムの規約により、消費税の取扱いが異なる場合があります。

消費税の処理については、収益認識に関する会計基準の適用前の処理が踏襲されます。そのため、同会計基準の適用前から他社ポイントを付与していた場合は、消費税の会計処理は同会計基準の適用前と同じになり、消費税の計算は変わりません。

ただし、収益認識に関する会計基準の適用後は、同会計基準の会計処理への組み替えが必要になるので、組み替えの際は、消費税額に影響が出ないように留意しなければなりません。