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工事契約等に関する取扱い

建設業などの工事契約は、以下の3つの要件のうち、いずれかを満たす場合には、一定の期間にわたり充足される履行義務となることから、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、収益を認識しなければなりません。


  1. 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること
  2. 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じるまたは資産の価値が増加し、当該資産が生じるまたは当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること
  3. 以下の要件のいずれも満たすこと
    ①企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること
    ②企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること

上記の要件のいずれも満たさない場合には、一時点で充足される履行義務として収益を認識します。

同一の顧客と複数の契約を締結した場合

工事契約において、同一の顧客と複数の契約を同時またはほぼ同時に締結した場合には、以下のいずれかに該当すれば、契約を結合し、単一の契約とみなして処理することになります(収益認識に関する会計基準第27項)。


  1. 当該複数の契約が同一の商業的目的を有するものとして交渉されたこと
  2. 1つの契約において支払われる対価の額が、他の契約の価格または履行により影響を受けること
  3. 当該複数の契約において約束した財またはサービスが、単一の履行義務となること

ただし、工事契約について、当事者間で合意された実質的な取引の単位を反映するように複数の契約(異なる顧客と締結した複数の契約や異なる時点に締結した複数の契約を含む。)を結合した際の収益認識の時期および金額と当該複数の契約について、上記の契約の結合と履行義務の識別(同会計基準32項)の定めに基づく収益認識の時期および金額との差異に重要性が乏しいと認められる場合には、当該複数の契約を結合し、単一の履行義務として識別することができます(収益認識に関する会計基準の適用指針第102項)。この定めは、受注制作のソフトウェアについても適用されます(同適用指針第103項)。



期間がごく短い工事契約および受注制作のソフトウェア

一定の期間に充足される履行義務の定め(収益認識に関する会計基準第38項)にかかわらず、工事契約について、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができます(収益認識に関する会計基準の適用指針第95項)。上記の定めは、受注制作のソフトウェアについても適用されます(同適用指針第96項)。

工期がごく短い工事契約は、通常、金額的な重要性が乏しく、工事契約としての性格にも乏しい場合が多いと想定され、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識しても財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものではないと考えられます(同適用指針第168項)。このような性格は受注制作のソフトウェアでも同様と解すことができます(同適用指針第169項)。

見積原価が変更された場合

工事契約においては、履行義務の充足に係る進捗度は、インプット法や原価比例法を採用するのが一般的です。

これらの方法を履行義務の充足に係る進捗度として採用した場合、当初の見積原価が変更されると収益の測定額に影響が出ます。

収益認識に関する会計基準第80-19項では、本会計基準を適用する際に行った判断および判断の変更のうち、顧客との契約から生じる収益の金額および時期の決定に重要な影響を与えるものを注記することを要請しています。



工事契約が変更された場合

工事契約が変更された場合には、契約変更として処理します。

契約変更が、以下のいずれの要件も満たす場合には、当該契約変更を独立した契約として処理します。


  1. 別個の財またはサービスの追加により、契約の範囲が拡大されること
  2. 変更される契約の価格が、追加的に約束した財またはサービスに対する独立販売価格に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること

上記のいずれの要件も満たさない場合は、独立の契約として処理せず、以下のいずれかの方法で処理します。


  1. 未だ移転していない財またはサービスが契約変更日以前に移転した財またはサービスと別個のものである場合には、契約変更を既存の契約を解約して新しい契約を締結したものと仮定して処理する。
  2. 未だ移転していない財またはサービスが契約変更日以前に移転した財またはサービスと別個のものではなく、契約変更日において部分的に充足されている単一の履行義務の一部を構成する場合には、契約変更を既存の契約の一部であると仮定して処理する。
  3. 未だ移転していない財またはサービスが、上記の「1」と「2」の両方を含む場合には、契約変更後の契約における未充足の履行義務に与える影響を、それぞれ上記の「1」または「2」の方法に基づき処理する。


工事補償引当金

工事が完成し引き渡した後、一定期間に補修費用の発生が見込まれる場合には、工事補償引当金を計上するか保証サービスとして処理しなければなりません。

工事の目的物が合意された仕様に従っているという保証のみである場合には、工事補償引当金として処理します(収益認識に関する会計基準の適用指針第34項)。

工事の目的物が合意された仕様に従っているという保証に加えて、顧客にサービスを提供する保証を含む場合には、保証サービスは履行義務であり、取引価格を当該目的物と保証サービスに配分します(同適用指針第35項)。

合意された仕様に従っているという保証と保証サービスの両方を含む場合で、それぞれを区分して合理的に処理できないときには、両方を一括して単一の履行義務として処理し、取引価格の一部を当該履行義務に配分します(同適用指針第36項)。



工事契約等から損失が見込まれる場合の取り扱い

工事契約について、工事原価総額等(工事原価総額のほか、販売直接費がある場合にはその見積額を含めた額)が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、その超過すると見込まれる額(工事損失)のうち、当該工事契約に関して既に計上された損益の額を控除した残額を、工事損失が見込まれた期の損失として処理し、工事損失引当金を計上します(収益認識に関する会計基準の適用指針第90項)。

受注制作のソフトウェアについても、工事契約に準じて工事損失引当金を計上します(同適用指針第91項)。



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