顧客により行使されない権利(非行使部分)
収益認識に関する会計基準第78項では、財またはサービスを顧客に移転する前に顧客から対価を受け取る場合、顧客から対価を受け取った時または受け取る期限が到来した時のいずれか早い時点で、顧客から受け取る対価について契約負債を貸借対照表に計上しなければならないと定めています。
契約負債の具体的な例には、百貨店などが販売する商品券や鉄道会社などが販売する回数券があります。これら商品券や回数券が顧客によって使用され、財またはサービスが移転し、履行義務が充足した時に当該契約負債の消滅を認識し、収益を認識します(収益認識に関する会計基準の適用指針第52項)。
しかし、商品券や回数券は、一定の割合で権利行使されない部分が存在し、同適用指針第53項では、顧客により権利行使されない部分を非行使部分と定めています。
非行使部分の収益認識
商品券や回数券などの契約負債における非行使部分については、企業が権利を得ることになります。
収益認識に関する会計基準の適用指針第54項では、非行使部分について、企業が将来において権利を得ると見込む場合と権利を得ると見込まない場合で、異なる方法で収益を認識することを規定しています。
権利を得ると見込む場合
契約負債における非行使部分について、企業が将来において権利を得ると見込む場合には、当該非行使部分の金額について、顧客による権利行使のパターンと比例的に収益を認識します。
権利を得ると見込まない場合
契約における非行使部分について、企業が将来において権利を得ると見込まない場合には、当該非行使部分の金額について、顧客が残りの権利を行使する可能性が極めて低くなった時に収益を認識します。
得られる権利の判定
契約負債における非行使部分について、企業が将来において権利を得ると見込むかどうかを判定するにあたっては、変動対価についても考慮しなければなりません。また、見積った取引価格は、各決算日に見直す必要があります(収益認識に関する会計基準の適用指針第55項)。
なお、顧客により行使されていない権利に係る顧客から受け取った対価について、法律により他の当事者への支払が要求される場合には、収益ではなく負債を認識しなければなりません(同適用指針第56項)。