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自社ポイントが他社ポイントに交換された場合の会計処理

ここでは、自社ポイントが他社ポイントに交換された場合の会計処理について、具体例を用いて解説します。

前提条件

  1. 甲社(3月決算会社)は、甲社が運営する店舗で顧客が買い物をするたびにポイントを付与しています。ポイントの付与率は100円につき1ポイントです。顧客は、次回以降の買い物の際にポイントを使用することができ、1ポイント当たり1円の値引きを受けられます。

  2. 甲社は、デパートを運営するT社と提携し、顧客が獲得したポイントを相互交換できるようにしています。ポイントの交換単位は、甲社ポイント100ポイントに対してT社ポイント100ポイント(100円相当)です。なお、甲社ポイントは、T社のデパートでは使用できません。また、T社ポイントも甲社の店舗では使用できません。

  3. 甲社が発行するポイントは、契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するものであるため、甲社は、顧客へのポイントの付与により履行義務が生じると結論づけました(収益認識に関する会計基準の適用指針第48項)。

  4. 甲社が発行するポイントの有効期限は、ポイントを付与した日の3年後の月末です。なお、ポイントの失効率は3%と見積もっています。

  5. x1年5月10日に顧客が甲社の運営する店舗で商品を10,000円購入しました。対価は現金で受け取っています。顧客に付与したポイントは100ポイント(100円相当)です。

  6. x1年6月20日に顧客が100ポイント(100円相当)をT社ポイント100ポイント(100円相当)に交換しました。

  7. x1年7月31日に甲社は、T社に100円を支払いました。

会計処理

取引価格の配分

甲社は、顧客から受け取った対価10,000円を商品とポイントの独立販売価格の比率で配分します。

商品の独立販売価格は10,000円ですが、ポイントの独立販売価格は収益認識に関する会計基準の適用指針第50項にしたがい、顧客により使用される可能性を考慮して見積らなければなりません。

顧客に付与したポイントは100ポイント(100円相当)、ポイント失効率は3%なので、以下の計算よりポイントの独立販売価格は97円になります。


  • ポイントの独立販売価格
    =付与したポイントの価格×(1-失効率)
    =100円×(1-0.03)
    =97円

したがって、顧客から受け取った対価10,000円は、商品の独立販売価格10,000円と付与したポイントの独立販売価格97円の比率で配分します。


  • 商品
    =10,000円×10,000円/(10,000円+97円)
    =9,904円

  • ポイント
    =10,000円×97円/(10,000円+97円)
    =96円

上記の計算を表にすると以下の通りです。

取引価格の配分

x1年5月10日

商品9,904円について収益を認識し、ポイント96円について契約負債を認識します。

x1年5月10日の会計処理

x1年6月20日

顧客が、甲社ポイント100ポイント(100円相当)をT社ポイント100ポイント(100円相当)と交換したので、甲社は、契約負債を減額し、T社に支払う100円を未払金として処理します。

x1年6月20日の会計処理

ポイント交換の一般的な会計処理は上記のようになります。

しかし、この会計処理だと、x1年5月10日に顧客に付与した甲社ポイント100ポイントに対応する契約負債は96円なのに対し、x1年6月20日にT社ポイント100ポイントと交換した時に消滅を認識する契約負債は100円なので、契約負債残高が-4円となってしまいます。

契約負債勘定

甲社ポイント100ポイントに対応する契約負債が96円である以上、ポイント交換で消滅を認識する契約負債も96円でなければなりません。ところが、T社に対する債務は100円となるため貸方には未払金100円を計上する必要があります。

そこで、このような場合には、計上する未払金100円と消滅を認識する契約負債96円の差額4円を売上高の修正として処理する方法が考えられます。

修正後のx1年6月20日の会計処理

上記の処理は、顧客がx1年5月10日に10,000円の買い物をした時にT社ポイント(他社ポイント)を100ポイント(100円相当)付与し未払金を計上したのと実質的に同じになり、契約負債残高がマイナスになる不都合を回避できます。

x1年5月10日の会計処理(T社ポイントを付与したと仮定)

期末にポイント使用分を売上高に振り替える処理

上記のようにポイント交換分の契約負債を未払金に振り替える処理を期中に行うと契約負債残高がマイナスになる不都合が生じる場合がありますが、期末に一括で契約負債を取り崩し、売上高に振り替える処理を行っていれば、契約負債がマイナスになる不都合は生じにくくなります。

例えば、1年間に顧客に付与したポイントが500ポイント(500円相当)、それに対応する契約負債が480円だったとします。

また、顧客が当期に使用したポイントは300ポイントで、そのうち200ポイントは買物代の支払い、100ポイントはT社ポイントとの交換に使用したとします。

この場合、顧客が使用したポイントに対して取り崩す契約負債は297円になります。


  • 取り崩す契約負債
    =300ポイント/(500ポイント×(1-0.03))×480円
    =297円

取り崩す契約負債のうち100円は、T社とのポイント交換に対応する部分なので、期中にすでに未払金に振り替えています。したがって、取り崩す契約負債297円のうち期末に売上高に振り替えるのは197円になります。


  • 契約負債から売上高への振替額
    =297円-100円
    =197円

よって、x1年度末の会計処理は以下の通りです。

x1年度末の会計処理

x1年7月31日

T社に100円を支払ったので、未払金の消滅を認識します。

x1年7月31日の会計処理

共通ポイントの会計処理

仮に甲社が共通ポイント・プログラムを運営していた場合、ポイント交換の会計処理は以下のようになります。

x1年6月20日の会計処理

消費税の会計処理は、ポイント交換が課税対象外取引(不課税取引)となる場合は上記と同じです。

ポイント交換が課税取引となる場合の会計処理は以下の通りです。なお、消費税率は10%とします。

x1年6月20日の会計処理(課税取引)