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マイルを特典航空券と交換した場合の会計処理

ここでは、マイルを特典航空券と交換した場合の会計処理について、具体例を用いて解説します。

前提条件

  1. 航空会社のJ社(3月決算会社)は、航空機に搭乗した顧客に対してマイルを付与しています。

  2. 1マイルは2円相当の価値があり、6,000マイルからJ社の特典航空券と交換できます。

  3. 当該マイルは、契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するものであるため、甲社は、顧客へのマイルの付与により履行義務が生じると結論づけました(収益認識に関する会計基準の適用指針第48項)。

  4. マイルの有効期限は、マイルを付与した日の2年後の月末です。なお、マイルの失効率は5%と見積もっています。

  5. x1年5月3日に顧客に航空券を100,000円で販売し、7,000マイルを付与しました。対価は現金で受け取っています。顧客は、同日に目的地に到着しました。

  6. x1年7月20日に顧客が6,000マイルと航空券を交換しました。顧客は同日に航空機に搭乗し、目的地に到着しました。

会計処理

x1年5月3日

顧客から受け取った対価100,000円を航空券とマイルの独立販売価格の比率で配分します。

マイルの独立販売価格の計算

顧客に付与したマイルは7,000マイル(14,000円相当)、マイル失効率は5%なので、以下の計算よりマイルの独立販売価格は13,300円になります。


  • マイルの独立販売価格
    =付与したマイルの価格×(1-失効率)
    =14,000円×(1-0.05)
    =13,300円

取引価格を航空券とマイルに配分

以下の計算より、対価100,000円を航空券に88,261円、マイルに11,739円配分します。


  • 航空券
    =100,000円×100,000円/(100,000円+13,300円)
    =88,261円

  • マイル
    =100,000円×13,300円/(100,000円+13,300円)
    =11,739円

上記の計算を表にすると以下の通りです。

取引価格の配分

仕訳

航空券88,261円について収益を認識し、マイル11,739円について契約負債を認識します。

x1年5月3日の会計処理は以下の通りです。

x1年5月3日の会計処理

本事例では、顧客が航空券を購入した当日に航空機に搭乗し、目的地に到着しているので、航空券の販売日に収益を認識しています。

顧客への航空券の販売日と顧客が航空機に搭乗し目的地に到着した日が異なる場合、航空会社の履行義務は、顧客を安全に目的地に運び終えた時に充足されるので、航空券の販売日には収益を認識しません。したがって、J社は、航空機が目的地に到着した日に収益を認識します。

なお、顧客に航空券を販売した時は、顧客から受け取った対価を契約負債として処理し、顧客が航空機に搭乗して目的地に到着した時に契約負債から売上高に振り替えることになります。

x1年7月20日

特典航空券に交換した6,000マイルに対応する契約負債は以下の計算より10,592円です。


  • 契約負債の取崩額
    =使用マイル/使用を見込むマイル総数×契約負債総額
    =6,000マイル/(7,000マイル×(1-0.05))×11,739円
    =10,592円

したがって、契約負債10,592円を売上高に振り替えます。

x1年7月20日の会計処理