子会社が他の子会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の会計処理
例えば、親会社のP社がA社とB社を子会社として支配している状況で、A社が営むカフェ事業をB社に会社分割により移転し、その対価として受け取ったB社株式をP社に配当したとします(分割型の会社分割)。

会社分割後、A社は吸収分割会社、B社は吸収分割承継会社となります。また、A社は、受け取ったB社株式を親会社のP社に配当しているため、B社を支配していません。

分割型の会社分割後も、P社はA社とB社を支配しています。したがって、当該分割型の会社分割は、結合当事企業(または事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主に支配されており、その支配が一時的ではない場合、共通支配下の取引となります。
吸収分割会社の個別財務諸表上の会計処理
吸収分割会社である子会社の会計処理は、分割型の会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合の親会社の会計処理に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第255項)。
吸収分割承継会社の個別財務諸表上の会計処理
吸収分割承継会社である他の子会社の会計処理は、分割型の会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合の子会社の会計処理に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第256項)。
吸収分割会社の株主に係る個別財務諸表上の会計処理
吸収分割会社の株主(親会社)が受け取った吸収分割承継会社の株式は、受け取る吸収分割承継会社の株式と、これまで保有していた吸収分割会社株式とが実質的に引き換えられたものとみなし、被結合企業の株主に係る会計処理(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第294項から第296項)に準じて処理します(同適用指針第257項)。
吸収分割会社株式が実質的に引き換えられたものとみなされる額の算定
吸収分割会社株式が実質的に引き換えられたものとみなされる額は、被結合企業の株主の会計処理における被結合企業の株式に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に代えて、会社分割直前の吸収分割会社等の株式の適正な帳簿価額のうち、合理的に按分する方法によって算定した引き換えられたものとみなされる部分の価額を用います(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第295項)。
合理的に按分する方法には、次のような方法が考えられ、実態に応じて適切に用います。
関連する時価の比率で按分する方法
分割された移転事業に係る株主資本相当額(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第87項(1)①)の時価と会社分割直前の吸収分割会社等の株主資本の時価との比率により、吸収分割会社等の株式の適正な帳簿価額を按分します(同適用指針第295項(1))。

時価総額の比率で按分する方法
会社分割直前直後の吸収分割会社等の時価総額の増減額を分割された事業の時価とみなし、会社分割直前の吸収分割会社等の時価総額との比率により、吸収分割会社等の株式の適正な帳簿価額を按分します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第295項(2)。

関連する帳簿価額(連結財務諸表上の帳簿価額を含む)の比率で按分する方法
分割された移転事業に係る株主資本相当額の適正な帳簿価額と会社分割直前の吸収分割会社等の株主資本の適正な帳簿価額との比率により、吸収分割会社等の株式の適正な帳簿価額を按分します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第295項(3))。
