逆取得となる株式交換の会計処理
株式交換が逆取得となる場合、株式交換完全子会社が取得企業、株式交換完全親会社が被取得企業となります。
株式交換完全子会社が取得企業となる場合、株式交換完全親会社の個別財務諸表では、当該株式交換完全子会社の株式交換直前における適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて、取得企業株式(株式交換完全子会社株式)の取得原価を算定します(企業結合に関する会計基準第36項)。
株式交換完全親会社の個別財務諸表上の会計処理
増加資本の会計処理
株式交換完全親会社(被取得企業)の増加資本の会計処理は、以下の場合に分けて行います。
株式交換完全親会社が新株を発行した場合の会計処理
企業結合の対価として、株式交換完全親会社が新株を発行した場合には、払込資本(資本金または資本剰余金)の増加として会計処理し、その内訳項目(資本金、資本準備金またはその他資本剰余金)は会社法の規定に基づき決定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第117-2項)。
また、増加すべき株主資本の額は、株式交換完全子会社株式(取得企業株式)の取得原価に準じて算定します(同適用指針第117-2項また書き)。
株式交換完全親会社が自己株式を処分した場合の会計処理
企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第84項(2)①の逆取得となる吸収合併における自己株式の原則的な会計処理に準じて処理します(同適用指針第117-3項)。
子会社株式の取得原価の算定
逆取得となる株式交換において、株式交換完全親会社の個別財務諸表上、当該株式交換完全親会社が取得する株式交換完全子会社株式(取得企業株式)の取得原価は、株式交換日の前日における株式交換完全子会社(取得企業)の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第118項)。
株式交換完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合等の取扱い
株式交換に際して、株式交換完全親会社(被取得企業)が株式交換完全子会社(取得企業)の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、または株式交換完全親会社(被取得企業)が新株予約権付社債を承継する場合には、株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社(取得企業)の株式交換日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額に、株式交換完全子会社(取得企業)で認識された新株予約権の消滅に伴う利益または新株予約権付社債の承継に伴う利益の額(税効果調整後)を加算して、子会社株式の取得原価を算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第118-2項)。

また、株式交換完全親会社(被取得企業)は、株式交換日の前日に 株式交換完全子会社(取得企業)で付されていた適正な帳簿価額により新株予約権または新株予約権付社債の適正な帳簿価額を純資産の部または負債の部に計上します(同適用指針第118-2項また書き)。
株式交換完全子会社の個別財務諸表上の会計処理
株式交換完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合等の取扱い
株式交換に際して、株式交換完全親会社(被取得企業)が株式交換完全子会社(取得企業)の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、または株式交換完全親会社(被取得企業)が新株予約権付社債を承継する場合、株式交換完全子会社(取得企業)は、株式交換日の前日に付していた適正な帳簿価額による新株予約権または新株予約権付社債の額を利益に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第118-3項)。
株式交換完全親会社となる企業の株式を保有していた場合
株式交換に際して、株式交換完全子会社(取得企業)が株式交換日の前日に株式交換完全親会社(被取得企業)となる企業の株式を保有していた場合、株式交換完全親会社(被取得企業)の株式を株式交換日の前日の適正な帳簿価額により、取得原価とします(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第118-4項)。
株式交換後の連結財務諸表上の会計処理
株式交換完全子会社(取得企業)は、株式交換完全親会社(被取得企業)を被取得企業としてパーチェス法を適用します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第119項)。
具体的には、株式交換日の前日における株式交換完全子会社(取得企業)の連結財務諸表上の金額(連結財務諸表を作成していない場合には個別財務諸表上の金額)に、次の手順により算定された額を加算します。
取得原価の算定
原則として、取得の対価となる財の企業結合日における時価で算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第119項(1))。
具体的な算定方法は、企業結合における取得原価の算定方法(同適用指針第37項から第50項)に準じます。
ただし、取得の対価となる財の時価は、株式交換完全親会社(被取得企業)の株主が結合後企業(株式交換完全親会社)に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数の株式交換完全子会社(取得企業)の株式を、株式交換完全子会社(取得企業)が交付したものとみなして算定します(同適用指針第119項(1)ただし書きおよび企業結合に関する会計基準(注1))。
段階取得に係る損益
株式交換完全子会社(取得企業)が株式交換日の前日に株式交換完全親会社(被取得企業)となる企業の株式を保有していた場合には、株式交換日の時価に基づく額を取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第119項(1)なお書き)。

持分法
投資会社が持分法適用関連会社と企業結合した場合には、株式交換日の前日の被取得企業の株式(関連会社株式)の持分法による評価額と株式交換日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益とし、これに見合う金額は、のれん(または負ののれん)の修正として処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第119項(1))。
なお、株式交換日の前日の個別財務諸表上の関連会社株式の帳簿価額と持分法による評価額との差額は、のれん(または負ののれん)の修正として処理します。
取得原価の配分
株式交換完全親会社(被取得企業)となる企業から受け入れた資産および引き受けた負債の会計処理は、企業結合における取得原価の配分方法(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第51項から第78項)に準じて処理します(同適用指針第119項(2))。
増加すべき株主資本の会計処理
取得原価の算定において、算定された取得の対価を払込資本に加算します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第119項(3))。
ただし、連結財務諸表上の資本金は株式交換完全親会社(被取得企業)の資本金とし、これと株式交換直前の連結財務諸表上の資本金(株式交換完全子会社の資本金)が異なる場合には、その差額を資本剰余金に振り替えます(同適用指針第119項(3)ただし書き)。