子会社が親会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理(会社分割の対価が親会社株式のみの場合)
子会社が親会社に会社分割により事業を移転し、その対価が親会社株式のみの場合、結合当事企業または事業のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配されていれば、その支配が一時的でない限り、共通支配下の取引に該当します。
例えば、子会社が営む居酒屋事業を親会社に会社分割により移転し、その対価として親会社株式を受け取る取引は、共通支配下の取引になります。この場合、親会社は吸収分割承継会社、子会社は吸収分割会社となります。

親会社の個別財務諸表上の会計処理
資産および負債の会計処理
親会社(吸収分割承継会社)が子会社から受け入れる資産および負債は、分割期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上します(企業結合に関する会計基準第41項および企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第214項(1))。
増加すべき株主資本の会計処理
移転事業に係る評価・換算差額等(親会社が作成する連結財務諸表において投資と資本の消去の対象とされたものを除く)を引き継ぐとともに、移転事業に係る株主資本相当額は払込資本(資本金または資本剰余金)として処理します。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金またはその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定します。

なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理します(同適用指針第214項(2)なお書き)。
企業結合(会社分割)に要した支出額の会計処理
企業結合(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第214項(3))。
親会社が子会社から受け入れる資産および負債の修正処理
親会社が子会社(吸収分割会社)から受け入れる資産および負債は、原則として適正な帳簿価額により計上しますが、親会社が作成する連結財務諸表において、当該移転事業に係る資産および負債の帳簿価額を修正しているときは、親会社が子会社を吸収合併する場合の会計処理における親会社が子会社から受け入れる資産および負債の修正処理、連結財務諸表上の帳簿価額が算定されていない場合の取扱いに準じて会計処理します。また、個別財務諸表上も、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額(のれんを含む)により資産および負債を受け入れます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第215項)。
子会社の個別財務諸表上の会計処理
子会社が受け入れる親会社株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額に基づいて算定します(企業結合に関する会計基準第43項)。
具体的には、親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理(会社分割の対価が子会社株式のみの場合)の親会社の会計処理に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第216項)。
また、事業分離(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理します(同適用指針第216項また書き)。
親会社の連結財務諸表上の会計処理
連結財務諸表上の会計処理は、以下のように行います(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第217項)。
- 内部取引の消去
子会社が会社分割の対価として受け入れた親会社株式のうち、分割期日の前日における親会社持分相当額とこれに対応する親会社の払込資本の増加額は、内部取引として消去する(企業結合に関する会計基準第44項)。 - 親会社株式のうち非支配株主持分相当額の振替処理
子会社が受け入れた親会社株式のうち、分割期日の前日における非支配株主持分相当額は、連結財務諸表における子会社および関連会社が保有する親会社株式等の取扱い(自己株式及び準備期の額の減少等に関する会計基準第15項)に従い非支配株主持分から控除する。