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子会社が他の子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理

例えば、親会社のP社がA社とB社を子会社として支配している状況で、A社が営むカフェ事業をB社に会社分割により移転したとします。

子会社が他の子会社に会社分割により事業を移転

会社分割後、A社(吸収分割会社)はB社(吸収分割承継会社)の株式を保有し、P社のB社に対する持分は減少します。

会社分割後

会社分割により、P社のB社に対する持分は減少しても、A社がB社の株式を取得し、B社に対する支配が維持されていれば、結合当事企業(または事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主に支配されており、その支配が一時的ではない場合、共通支配下の取引となります。

吸収分割会社の個別財務諸表上の会計処理

吸収分割会社である子会社の会計処理は、親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の親会社の会計処理に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第254-2項)。

子会社が他の子会社に会社分割により事業を移転する場合(会社分割の対価が吸収分割承継会社である他の子会社の株式である場合)、共通支配下の取引となります。そのため、個別財務諸表上、吸収分割会社である子会社が受け入れる、吸収分割承継会社である他の子会社の株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額に基づいて算定します。したがって、吸収分割承継会社である他の子会社が、吸収分割会社である子会社の子会社および関連会社となる場合のほか、それ以外となる場合(他の子会社の株式がその他有価証券に分類される場合)でも、移転損益を認識しません(同適用指針第447-2項)。

吸収分割承継会社の個別財務諸表上の会計処理

吸収分割承継会社である他の子会社の会計処理は、親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の子会社の会計処理(会社分割の対価が子会社株式のみの場合および会社分割の対価が子会社株式と現金等の財産の場合)に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第254-3項)。

吸収分割会社の連結財務諸表上の会計処理

吸収分割承継会社である他の子会社が吸収分割会社の子会社となる場合

内部取引の消去

事業の移転取引および子会社の増資に関する取引は、内部取引として消去します(企業結合に関する会計基準第44項および企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第254-4項(1)①)。

親会社の持分変動による差額の計上

吸収分割会社は、移転事業に係る株主資本相当額に基づいて算定された取得した子会社株式の取得原価と、これに対応する吸収分割承継会社の事業分離直後の資本との差額を、資本剰余金に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第254-4項(1)②)。

なお、吸収分割承継会社の事業分離直後の資本は、企業結合日における適正な帳簿価額による子会社となる吸収分割承継会社等の資本に事業分離により増加する吸収分割会社等の持分比率を乗じて算定します。

親会社の持分変動による差額

吸収分割承継会社である他の子会社が吸収分割会社の関連会社となる場合

吸収分割会社は、移転事業に係る株主資本相当額に基づいて算定された受け入れた関連会社株式の取得原価と、これに対応する吸収分割承継会社の事業分離直後の資本との差額を、関連会社株式の持分変動差額として処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第254-4項(2))。

なお、吸収分割承継会社の事業分離直後の資本は、企業結合日における適正な帳簿価額による関連会社となる吸収分割承継会社等の資本に事業分離により増加する吸収分割会社等の持分比率を乗じて算定します。