同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理(合併対価が吸収合併存続会社の株式のみである場合)
例えば、親会社のP社が、A社とB社を子会社として支配している状況でB社がA社を吸収合併したとします。

B社は、合併の対価としてA社の株主(P社とA社非支配株主)に株式を交付します。

P社は、A社(吸収合併消滅会社)を吸収合併したB社(吸収合併存続会社)を支配し続け、A社の非支配株主はB社の非支配株主になります。当該吸収合併は、結合当事企業(または事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主に支配されており、その支配が一時的ではない場合、共通支配下の取引となります。

吸収合併消滅会社の個別財務諸表上の会計処理
吸収合併消滅会社である子会社は、合併期日の前日に決算を行い、資産および負債の適正な帳簿価額を算定します(企業結合に関する会計基準第41項および企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第246項)。
吸収合併存続会社の個別財務諸表上の会計処理
受け入れた資産および負債の会計処理
吸収合併存続会社である子会社が吸収合併消滅会社である子会社から受け入れる資産および負債は、合併期日の前日に付された適正な帳 簿価額により計上します(企業結合に関する会計基準第41項および企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第247項(1))。
増加すべき株主資本の会計処理
合併が共同支配企業の形成と判定された場合の吸収合併存続会社の会計処理に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第247項(2)、第185項および第408項)。
抱合せ株式の会計処理
吸収合併存続会社である子会社が吸収合併消滅会社である子会社の株式(関連会社株式またはその他有価証券)を保有している場合で、新株を発行したときの吸収合併存続会社の増加すべき株主資本については、株主資本の額から抱合せ株式を控除する方法とその他資本剰余金から抱合せ株式を控除する方法のいずれかの会計処理によります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第247項(3))。
株主資本の額から抱合せ株式を控除する方法
吸収合併消滅会社の株主資本の額から当該抱合せ株式の適正な帳簿価額を控除した額を払込資本の増加として処理します。なお、当該差額がマイナスの場合にはその他利益剰余金の減少として処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第247項(3)①)。

その他資本剰余金から抱合せ株式を控除する方法
吸収合併消滅会社の株主資本を引き継いだ上で、当該抱合せ株式の適正な帳簿価額をその他資本剰余金から控除します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第247項(3)②)。

企業結合に要した支出額の会計処理
企業結合に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第247項(4))。
結合当事企業の株主(親会社)に係る会計処理
吸収合併消滅会社の株主(親会社)が受け取った吸収合併存続会社の株式(子会社株式)の取得原価は、引き換えられた吸収合併消滅会社の株式(子会社株式)に係る企業結合日直前の適正な帳簿価額に基づいて計上します。したがって、交換損益は認識されません(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第248項)。
連結財務諸表上の会計処理
吸収合併消滅会社の株主(親会社)は、 連結財務諸表上、吸収合併存続会社に係る当該株主(親会社)の持分の増加額と吸収合併消滅会社に係る株主(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額を、資本剰余金に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第249項)。

吸収合併消滅会社の株主としての持分比率が増加し、吸収合併存続会社の株主としての持分比率が減少する場合は、吸収合併消滅会社に係る当該株主(親会社)の持分の増加額と吸収合併存続会社に係る当該株主(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額を資本剰余金に計上します。
