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企業結合が取得とされた場合における取得企業の増加資本の会計処理の具体例(新株の発行と自己株式の処分を併用した場合)

ここでは、企業結合取得とされた場合における取得企業の増加資本の会計処理(新株の発行と自己株式の処分を併用した場合)について具体例を用いて解説します。

前提条件


  1. 公開会社の甲社(3月決算会社)と公開会社の乙社(3月決算会社)は、吸収合併存続会社を甲社、吸収合併消滅会社を乙社として合併に合意しました。

  2. 合併期日(企業結合日)はx2年4月1日。

  3. 乙社株主に対して割り当てる甲社の株式数は20株です。甲社は、保有する自己株式を2株(帳簿価額80千円)処分し、新株を18株発行します。

  4. 当該企業結合は取得とされ、取得企業は甲社とします。

  5. 合併期日(企業結合日)における甲社の株価は1株50千円です。

  6. 合併期日(企業結合日)の前日における乙社の貸借対照表に計上されている資産の合計額は800千円、負債の合計額は300千円です。

  7. 合併期日(企業結合日)における乙社の識別可能資産時価は1,000千円です。負債の時価は乙社の帳簿価額と一致しており300千円を引き継ぎます。

  8. 甲社は、増加すべき株主資本のうち、資本金を500千円、資本準備金を250千円増加させ、残額についてはその他資本剰余金としました。

個別財務諸表上の会計処理

取得原価の算定

本事例では、甲社が取得企業となります。

甲社の取得の対価は、甲社の株式なので、企業結合日における甲社株式の時価により算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第79項また書きおよび第38項)。

したがって、取得原価は、以下の計算より1,000千円になります。


  • 取得原価
    =50千円×20株
    =1,000千円

取得原価の配分

企業結合日における識別可能資産および負債は、時価で算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第53項)。


  • 資産の時価=1,000千円
  • 負債の時価=300千円

よって、受け入れた資産および引き受けた負債の純額(取得原価の配分額)は700千円になります。


  • 受け入れた資産および引き受けた負債の純額
    =1,000千円-300千円
    =700千円

資産および負債の純額

のれんの算定

取得原価1,000千円が、受け入れた資産および引き受けた負債の純額700千円を上回っているので、その超過額300千円はのれんとして資産計上します。


  • のれん
    =1,000千円-700千円
    =300千円

のれんの算定

増加すべき株主資本の額

企業結合の対価として、取得企業が自己株式を処分した場合には、増加すべき株主資本の額から処分した自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本の増加として会計処理します。自己株式の処分と新株の発行を同時に行った場合も同様に処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第80項)。

したがって、増加すべき株主資本の額1,000千円から交付した自己株式の帳簿価額80千円を控除して算定した額920千円を払込資本の増加として処理します。


  • 払込資本の増加額
    =1,000千円-80千円
    =920千円

その他資本剰余金の増加額

払込資本の増加額920千円のうち、500千円を資本金、250千円を資本準備金とするので、残額の170千円がその他資本剰余金となります。


  • その他資本剰余金の増加額
    =920千円-500千円-250千円
    =170千円

増加すべき株主資本の内訳

企業結合日における取得企業甲社の会計処理

以上より、取得企業甲社の会計処理は以下のようになります。

企業結合日における取得企業甲社の会計処理