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親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理(会社分割の対価が子会社株式と現金等の財産の場合)

例えば、親会社が運営するカフェ事業を子会社に移転し、対価として子会社株式と現金を受け取る取引は、結合当事企業(または事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主に支配されており、その支配が一時的ではない場合、共通支配下の取引となります。

親会社が子会社に事業を移転し子会社株式と現金を受け取る場合

この場合、親会社は吸収分割会社、子会社は吸収分割承継会社になります。

親会社の個別財務諸表上の会計処理

吸収分割会社である親会社が子会社に事業を移転し、受取対価に子会社株式のほか、現金等の財産が含まれている場合には、移転事業に係る株主資本相当額がプラスの場合とマイナスの場合に分けて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第230項)。

移転事業に係る株主資本相当額がプラスの場合

受け取った現金等の財産の適正な帳簿価額が移転事業に係る株主資本相当額より小さい場合

受け取った現金等の財産の適正な帳簿価額が移転事業に係る株主資本相当額より小さい場合には、当該差額を子会社株式の取得原価とします(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第230項(1)①)。

受け取った現金等の財産の適正な帳簿価額が移転事業に係る株主資本相当額より小さい場合

受け取った現金等の財産の適正な帳簿価額が移転事業に係る株主資本相当額より大きい場合

受け取った現金等の財産の適正な帳簿価額が移転事業に係る株主資本相当額より大きい場合には、当該差額を移転利益に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第230項(1)②)。

受け取った現金等の財産の適正な帳簿価額が移転事業に係る株主資本相当額より大きい場合

移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合

現金等の財産の適正な帳簿価額と等しい金額については移転利益に計上し、マイナスとなる移転事業に係る株主資本相当額については、まず、事業分離前から保有している子会社株式の適正な帳簿価額を充て、これを超えることとなったマイナスの金額を「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目をもって負債に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第230項(2))。

移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合

組織再編により生じた株式の特別勘定の事業分離後の会計処理

組織再編により生じた株式の特別勘定は、分離元企業が当該分離先企業の株式を処分したときには損益に振り替え、現物配当(分割型の会社分割を含む)を行ったときは株主資本を直接変動させるなど、通常の有価証券の会計処理に従うことになります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第394項なお書き)。

子会社の個別財務諸表上の会計処理

受け入れた資産および負債の会計処理

吸収分割承継会社である子会社が親会社から受け入れる資産および負債は、移転直前に付された適正な帳簿価額により計上します(企業結合に関する会計基準第41項および企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第231項(1))。

増加すべき株主資本の会計処理

移転事業に係る評価・換算差額等については、親会社の移転直前の適正な帳簿価額を引き継いだうえで、移転事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産の適正な帳簿価額より大きい場合と小さい場合に分けて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第231項(2))。

移転事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産の適正な帳簿価額より大きい場合

移転事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産の適正な帳簿価額より大きい場合には、当該差額を払込資本の増加として処理します。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金またはその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第231項(2)①)。

移転事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産の適正な帳簿価額より大きい場合

移転事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産の適正な帳簿価額より小さい場合

移転事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産の適正な帳簿価額より小さい場合には、払込資本をゼロとし、当該差額をのれんに計上します。

移転事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産の適正な帳簿価額より小さい場合

移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合

移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、当該マイナス金額をその他利益剰余金のマイナスとして処理します。また、交付した現金等の財産の適正な帳簿価額と等しい金額をのれんに計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第231項(2)なお書き)。

移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合

なお、のれんは、企業結合が取得とされた場合の取得原価の配分方法におけるのれんに対する税効果の規定、のれんの会計処理の規定、連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針第40項に準じて会計処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第231項(2))。



企業結合(会社分割)に要した支出額の会計処理

企業結合(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第231項(3))。

親会社の連結財務諸表上の会計処理

個別財務諸表上認識された移転利益は、「連結財務諸表に関する会計基準」における未実現損益の消去に準じて処理します。また、子会社に係る分離元企業の持分の増加額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額は、親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理(会社分割の対価が子会社株式のみの場合)における親会社の連結財務諸表上の会計処理に準じ、資本剰余金に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第232項)。