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子会社が親会社を吸収合併する場合の会計処理

親会社と子会社との合併において、子会社が吸収合併存続会社(親会社が吸収合併消滅会社)となる場合は、企業集団の観点から取引の実態をみると、親会社を吸収合併存続会社とみなした吸収合併と同様に考えることができるため、共通支配下の取引に該当します。(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第440項および第441項)。

親会社の個別財務諸表上の会計処理

親会社(吸収合併消滅会社)は、合併期日の前日に決算を行い、資産負債および純資産の適正な帳簿価額を算定します。

子会社の個別財務諸表上の会計処理

資産および負債の会計処理

子会社(吸収合併存続会社)が親会社(吸収合併消滅会社)から受け入れる資産および負債は、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上します。子会社は、親会社が所有していた子会社株式を自己株式として株主資本から控除します(企業結合に関する会計基準第41項および企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第210項(1))。

増加すべき株主資本の会計処理

移転された資産および負債の差額は、純資産として処理します(企業結合に関する会計基準第42項)。具体的には、逆取得となる吸収合併の会計処理に準じて会計処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第210項(2))。

子会社が親会社から受け入れる資産および負債の修正処理

合併前に子会社(吸収合併存続会社)が親会社(吸収合併消滅会社)に資産等を売却しており、当該取引から生じた未実現損益を連結財務諸表上、消去しているときは、子会社の個別財務諸表上、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額により親会社の資産および負債を受け入れます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第211項)。

ただし、実務上の観点から、企業結合後、短期間に第三者に処分される見込みの棚卸資産に係る未実現損益や金額的重要性が低いものについては、未実現損益を消去せず、親会社の適正な帳簿価額をそのまま受け入れることができます(同適用指針第211項ただし書き)。

親会社が連結財務諸表を作成していない場合

合併前に親会社が連結財務諸表を作成していない場合には、連結財務諸表上の帳簿価額に代えて、親会社の適正な帳簿価額を用いることができます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第211項なお書き)。

連結財務諸表上の会計処理

吸収合併が行われた後に子会社が連結財務諸表を作成する場合には、子会社の個別財務諸表における処理を振り戻し、親会社が子会社の非支配株主から株式を取得したものとした会計処理を行います(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第212項)。

具体的には、以下のように処理します。


  1. 時価評価替後の資産および負債を連結財務諸表上の帳簿価額として受け入れる。

  2. 合併に際し子会社が受け入れた自己株式とそれに対する増加すべき株主資本は内部取引として消去する。

  3. 子会社の非支配株主が保有していた子会社株式は、当該合併に際して、親会社株式との交換はないものの、連結財務諸表上、親会社株式との交換があったものとみなして、時価を基礎として取得原価を算定する。

なお、連結財務諸表上の資本金は、吸収合併存続会社(子会社)の資本金とし、これと合併直前の連結財務諸表上の資本金(親会社の資本金)が異なる場合には、その差額を資本剰余金に振り替えます(同適用指針第212項なお書き)。

子会社が連結財務諸表を作成しない場合の注記事項の算定基礎

吸収合併が行われた後に、子会社が連結財務諸表を作成しない場合は、経済的実態に即した情報が開示されなくなること、合併後も連結財務諸表を作成する場合との比較から、親会社を吸収合併存続会社とみなした場合の財務情報の開示が求められます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第441項)。

そのため、連結財務諸表上の会計処理に準じて算定された額を基礎として、親会社が吸収合併存続会社であるとみなした場合の個別貸借対照表および個別損益計算書に及ぼす影響の概算額を注記しなければなりません(同適用指針第213項)。