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共同支配企業の形成と判定された会社分割(吸収分割または共同新設分割)の会計処理

例えば、A社はカフェ事業、B社は居酒屋事業を運営していたとします。

会社分割前

A社はカフェ事業、B社は居酒屋事業をC社に移転します。そして、C社は、A社とB社に株式を交付します。

会社分割

A社とB社は共同支配投資企業吸収分割会社)となり、C社は共同支配企業吸収分割承継会社)となります。

会社分割後
  1. 吸収分割承継会社等(共同支配企業)の会計処理
  2. 吸収分割会社等(共同支配投資企業)の会計処理
  3. 吸収分割会社等(一般投資企業)の会計処理

吸収分割承継会社等(共同支配企業)の会計処理

資産および負債の会計処理

共同支配企業の形成にあたり、吸収分割承継会社等(共同支配企業)は、移転された資産および負債を分割期日の前日における適正な帳簿価額により計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第192項)。

結合当事企業において付された適正な帳簿価額を引き継ぐ場合、結合後企業が結合当事企業から引き継ぐ適正な帳簿価額による資産総額が負債総額を下回る場合もあります。このような場合であっても、結合後企業はその適正な帳簿価額により個々の資産および負債を引き継ぐ必要があり、企業結合に際して資産および負債を評価替えすることは認められません(同適用指針第407項)。

なお、適正な帳簿価額とは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して算定された帳簿価額をいうため、例えば、固定資産の減損に係る会計基準などが適用されていることが前提であることに留意する必要があります(同適用指針第407項なお書き)。

新株を発行した場合の増加資本の会計処理

吸収分割承継会社等(共同支配企業)は、移転された資産および負債の差額を次のように会計処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第193項)。

移転事業に係る株主資本相当額の取扱い

移転事業に係る株主資本相当額払込資本資本金または資本剰余金)として処理します。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金またはその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第193項(1))。

なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理します(同適用指針第193項(1)なお書き)。

移転事業に係る評価・換算差額等の取扱い

移転事業に係る評価・換算差額等については、吸収分割会社等の移転直前の適正な帳簿価額をそのまま引き継ぎきます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第193項(2))。

したがって、移転された事業にその他有価証券や土地再評価法に基づき再評価した土地が含まれ、吸収分割会社等が当該その他有価証券や土地を時価または再評価額をもって分割期日の前日の貸借対照表価額としている場合には、吸収分割承継会社等は、分割期日の前日のその他有価証券および土地の貸借対照表価額ならびにその他有価証券評価差額金および土地再評価差額金もそのまま引き継ぐことになります。

新株を発行した場合の移転事業に係る株主資本相当額

自己株式を処分した場合の増加資本の会計処理

会社分割の対価として吸収分割承継会社等が自己株式を処分した場合には、吸収合併存続会社(共同支配企業)が自己株式を処分した場合の株主資本項目の原則的な会計処理に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第193-2項)。

吸収分割承継会社等(共同支配企業)のその他の会計処理

吸収分割承継会社等(共同支配企業)の個別財務諸表におけるその他の会計処理は、以下の逆取得となる吸収分割または現物出資の会計処理に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第194項)。


  1. 会計処理方法の統一
  2. 分割期日の前日までの結合当事企業間の取引の会計処理
  3. 会社分割または現物出資に要した支出額の会計処理

投資企業の中に一般投資企業が含まれている場合の取扱い

ある企業結合が共同支配企業の形成と判定された場合において、吸収分割会社等の中に一般投資企業が含まれているときは、共同支配企業が一般投資企業から取得した事業(資産および負債)に対して、パーチェス法を適用します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第195項)。

吸収分割会社等(共同支配投資企業)の会計処理

個別財務諸表上の会計処理

吸収分割会社等(共同支配投資企業)は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて吸収分割承継会社等に対する投資(共同支配企業株式)の取得原価を算定します(企業結合に関する会計基準第39項(1))。

具体的には、吸収分割会社等が受け入れる共同支配企業株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額から移転事業に係る繰延税金資産および繰延税金負債を控除することに留意する必要があります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第196項)。

当該金額がマイナスとなる場合は、当該マイナスの金額を「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目により負債に計上します(同適用指針第196項なお書き)。

連結財務諸表上の会計処理

吸収分割会社等(共同支配投資企業)は、共同支配企業の形成にあたり事業を移転した場合には、共同支配企業に対する投資について持分法を適用します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第197項)。

共同支配投資企業の子会社が共同支配企業に投資している場合の会計処理

ある吸収分割会社等(共同支配投資企業)の子会社が、同一の吸収分割承継会社等(共同支配企業)に投資している場合には、当該子会社も共同支配投資企業とみなし、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第196項および第197項に準じて会計処理します(同適用指針第198項)。

吸収分割会社等(一般投資企業)の会計処理

吸収分割会社等のうち一般投資企業の共同支配企業の形成時(事業移転時)の会計処理は、分離先企業における企業結合が取得とされたときの分離元企業の会計処理に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第199項)。