逆取得となる現物出資または吸収分割の会計処理
現物出資会社または吸収分割会社が取得企業となる場合(現物出資または吸収分割による子会社化の形式をとる場合)、被取得企業に移転された事業に対する取得企業の投資はその企業結合の前後で継続していることから、取得企業の個別財務諸表では、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて、被取得企業株式の取得原価を算定します(企業結合に関する会計基準第35項および第114項)。
増加資本の会計処理
企業結合が吸収分割または現物出資による子会社化の形式をとる場合(逆取得となる場合)、吸収分割承継会社または現物出資の受入会社(被取得企業)の個別財務諸表上は、吸収分割会社または現物出資会社(取得企業)の資産および負債の移転直前の適正な帳簿価額により計上し、当該資産および負債の差額は、以下の場合に分けて会計処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第87項)。
なお、吸収分割承継会社または現物出資の受入会社が受け入れた自己株式(吸収分割会社または現物出資会社(取得企業)から移転された吸収分割承継会社株式または現物出資の受入会社株式)は、吸収分割会社または現物出資会社(取得企業)における適正な帳簿価額により、吸収分割承継会社または現物出資の受入会社(被取得企業)の株主資本からの控除項目として表示します(同適用指針第87項なお書き)。
新株を発行した場合の会計処理
移転事業に係る株主資本相当額の取扱い
吸収分割承継会社等に移転された(または吸収分割会社等が移転した)事業に係る資産および負債の移転直前の適正な帳簿価額による差額から移転事業に係る評価・換算差額等および新株予約権を控除した額(移転事業に係る株主資本相当額)を払込資本(資本金または資本剰余金)として処理します。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金またはその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定します。なお、抱合せ株式等がある場合には、逆取得となる吸収合併における抱合せ株式等の会計処理に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第87項(1)①)。
また、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスになる場合および抱合せ株式等の会計処理により株主資本の額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理します(同適用指針第87項(1)①また書き)。
移転事業に係る評価・換算差額等の取扱い
吸収分割承継会社等に移転された(または吸収分割会社等が移転した)事業に係る評価・換算差額等および新株予約権(移転事業に係る評価・換算差額等)については、吸収分割会社または現物出資会社の移転直前の適正な帳簿価額を引き継ぎます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第87項(1)②)。
したがって、移転された事業にその他有価証券や土地再評価差額法に基づき再評価した土地が含まれ、吸収分割会社等が当該その他有価証券や土地を時価または再評価額をもって分割期日の前日の貸借対照表価額としている場合には、吸収分割承継会社等は、分割期日の前日のその他有価証券および土地の貸借対照表価額並びにその他有価証券評価差額金および土地再評価差額金もそのまま引き継ぐことになります。

自己株式を処分した場合の会計処理
逆取得となる吸収合併における自己株式の原則的な会計処理に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第87項(2))。
抱合せ株式等がある場合には、逆取得となる吸収合併において自己株式を処分した場合に準じて処理します(同適用指針第87項(2)なお書き)。
会計処理方法の統一
吸収分割承継会社または現物出資の受入会社(被取得企業)と吸収分割会社または現物出資会社(取得企業)から移転される事業の間で会計処理方法に違いがある場合には、同一の環境下で行われた同一の性質の取引等については会計処理方法の変更に準じて、適切と考えられる方法に統一します。具体的な会計処理方法の統一は、逆取得となる吸収合併における会計処理方法の統一に準じて行います(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第87-2項)。
分割期日の前日までの結合当事企業間の取引の会計処理
分割期日または現物出資の給付日の前日までの吸収分割承継会社または現物出資の受入会社(被取得企業)と吸収分割会社または現物出資会社(取得企業)の間の取引は、原則として、第三者間取引として取り扱います(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第87-3項)。
会社分割または現物出資に要した支出額の会計処理
会社分割または現物出資に要した支出額(株式交付費を含む。)は、発生時の事業年度の費用として会計処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第87-4項)。