同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理(合併対価が吸収合併存続会社の株式と現金等の財産である場合)
例えば、親会社のP社が、A社とB社を子会社として支配している状況でB社がA社を吸収合併したとします。

B社は、合併の対価としてA社の株主(P社とA社非支配株主)に株式を交付するととともに現金を支払います。

P社は、A社(吸収合併消滅会社)を吸収合併したB社(吸収合併存続会社)を支配し続け、A社の非支配株主はB社の非支配株主になります。当該吸収合併は、結合当事企業(または事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主に支配されており、その支配が一時的ではない場合、共通支配下の取引となります。

吸収合併消滅会社の個別財務諸表上の会計処理
吸収合併消滅会社である子会社は、合併期日の前日に決算を行い、資産および負債の適正な帳簿価額を算定します(企業結合に関する会計基準第41項および企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第250項)。
吸収合併存続会社の個別財務諸表上の会計処理
受け入れた資産および負債の会計処理
吸収合併存続会社である子会社が吸収合併消滅会社である子会社から受け入れる資産および負債は、合併期日の前日に付された適正な帳 簿価額により計上します(企業結合に関する会計基準第41項および企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第251項(1))。
増加すべき株主資本の会計処理
吸収合併消滅会社の株主資本の額がプラスの場合と吸収合併消滅会社の株主資本の額がマイナスの場合に分けて会計処理します(企業結合に関する会計基準第42項および企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第251項(2))。
吸収合併消滅会社の株主資本の額がプラスの場合
吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額から、合併の対価として支払った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額を控除した額がプラスとなる場合には、当該差額を払込資本とします。
支払った現金等の財産に係る評価・換算差額等または新株予約権が含まれている場合には、当該金額を支払った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額から控除します。

吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額から、合併の対価として支払った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額を控除した額がマイナスとなる場合には、払込資本はゼロとし、のれんを計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第251項(2)①)。

なお、のれん(または負ののれん)は、企業結合が取得とされた場合の取得原価の配分方法におけるのれんに対する税効果の規定、のれんの会計処理の規定、連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針第40項に準じて会計処理します(同適用指針第251項(2)①なお書きおよび第448項)。
吸収合併消滅会社の評価・換算差額等および新株予約権の適正な帳簿価額は、吸収合併存続会社にそのまま引き継ぎます(同適用指針第251項(2)なお書き)。
吸収合併消滅会社の株主資本の額がプラスの場合の取り扱いは、いわゆる三角合併のように子会社が親会社株式を対価として他の子会社と吸収合併を行う場合における親会社株式にも適用します。
吸収合併消滅会社の株主資本の額がマイナスの場合
合併の対価として支払った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額(支払った現金等の財産に係る評価・換算差額等または新株予約権が含まれている場合には、当該適正な帳簿価額を控除する)と等しい金額をのれんに計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第251項(2)②および第488項)。
また、吸収合併存続会社の増加すべき株主資本については払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理します。

吸収合併消滅会社の評価・換算差額等および新株予約権の適正な帳簿価額は、吸収合併存続会社にそのまま引き継ぎます(同適用指針第251項(2)なお書き)。
吸収合併消滅会社の株主資本の額がマイナスの場合の取り扱いは、いわゆる三角合併のように子会社が親会社株式を対価として他の子会社と吸収合併を行う場合における親会社株式にも適用します。
企業結合に要した支出額の会計処理
企業結合に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第251項(3))。
結合当事企業の株主(親会社)に係る会計処理
吸収合併消滅会社の株主(親会社)が吸収合併存続会社から受け取った現金等の財産は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上します(事業分離等に関する会計基準第45項)。
この結果、当該価額が吸収合併消滅会社の株式に係る適正な帳簿価額を上回る場合には、原則として、当該差額を交換利益として認識し、受け入れる吸収合併存続会社の株式の取得原価はゼロとします(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第251項)。

一方、吸収合併存続会社から受け取った現金等の財産が、吸収合併消滅会社の株式に係る適正な帳簿価額を下回る場合には、当該差額を吸収合併存続会社の株式の取得原価とします。

ただし、いわゆる三角合併のように、子会社が親会社株式と自社(吸収合併存続会社である子会社)の株式を対価として他の子会社と吸収合併を行う場合、吸収合併消滅会社の株主(親会社)が受け入れる自己株式の取得原価は、吸収合併消滅会社の株式の適正な帳簿価額のうち引き換えられた部分に相当する額により算定します。この結果、吸収合併消滅会社の株式に係る適正な帳簿価額から当該自己株式の取得原価を控除した額が、受け入れる吸収合併存続会社の株式の取得原価となります(同適用指針第251項ただし書き)。

連結財務諸表上の会計処理
交換利益の消去
吸収合併消滅会社の株主(親会社)が個別財務諸表上認識した交換利益は、親会社の連結財務諸表上、「連結財務諸表に関する会計基準」における未実現損益の消去に準じて処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第253項)。
親会社の持分変動による差額の計上
吸収合併消滅会社の株主(親会社)は、 連結財務諸表上、吸収合併存続会社に係る当該株主(親会社)の持分の増加額と吸収合併消滅会社に係る株主(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額を、資本剰余金に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第253項)。

吸収合併消滅会社の株主としての持分比率が増加し、吸収合併存続会社の株主としての持分比率が減少する場合は、吸収合併消滅会社に係る当該株主(親会社)の持分の増加額と吸収合併存続会社に係る当該株主(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額を資本剰余金に計上します。

- 同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理の具体例(合併対価が吸収合併存続会社の株式と現金等の財産である場合-結合当事企業(親会社)が受け取った現金等の財産の簿価が吸収合併消滅会社の株主資本の額を上回る場合)
- 同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理の具体例(合併対価が吸収合併存続会社の自己株式と現金等の財産である場合-結合当事企業(親会社)が受け取った現金等の財産の簿価が吸収合併消滅会社の株主資本の額を上回る場合)
- 同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理の具体例(合併対価が吸収合併存続会社の株式と現金等の財産である場合-結合当事企業(親会社)が受け取った現金等の財産の簿価が吸収合併消滅会社の株式の簿価を下回る場合)
親会社株式を対価とした場合
いわゆる三角合併のように、子会社が親会社株式と吸収合併存続会社である子会社の株式を対価として他の子会社と吸収合併を行う場合は、連結財務諸表上、親会社株式を対価とした部分について資本取引として扱います(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第253項なお書き)。