企業結合に関する注記事項
- 取得とされた企業結合の注記事項
- 連結財務諸表を作成しない場合の注記事項
- 共通支配下の取引等に係る注記事項
- 子会社が親会社を吸収合併した場合で、子会社が連結財務諸表を作成しないときの注記事項
- 共同支配投資企業における注記事項
- 重要な後発事象等の注記
取得とされた企業結合の注記事項
企業結合年度において、取得とされた企業結合に係る重要な取引がある場合には、次の事項を注記します(企業結合に関する会計基準第49項)。
- 企業結合の概要
- 財務諸表に含まれている被取得企業または取得した事業の業績の期間
- 取得原価の算定等に関する事項
- 取得原価の配分に関する事項
- 比較損益情報
なお、個々の企業結合については重要性は乏しいが、企業結合年度における複数の企業結合全体について重要性がある場合には、上記「1」「3」「4」について企業結合全体で注記します。また、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同じとなる場合には、個別財務諸表においては、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができます(同会計基準第49項なお書き)。
企業結合の概要
企業結合の概要には、以下を記載します(企業結合に関する会計基準第49項(1))。
- 被取得企業の名称および事業の内容
- 事業を取得した場合は相手企業の名称および取得した事業の内容
- 企業結合を行った主な理由
- 企業結合日
- 企業結合の法的形式
- 結合後企業の名称
- 取得した議決権比率(段階取得の場合には、企業結合直前に所有していた議決権比率、企業結合日に追加取得した議決権比率および取得後の議決権比率)
- 取得企業を決定するに至った主な根拠
取得原価の算定等に関する事項
取得原価の算定等に関する事項には、以下の内容を記載します(企業結合に関する会計基準第49項(3))。
- 被取得企業または取得した事業の取得原価および対価の種類ごとの内訳。株式を交付した場合には、株式の種類別の交換比率およびその算定方法ならびに交付または交付予定の株式数
- 企業結合契約に定められた条件付取得対価の内容およびそれらの今後の会計処理方針
- 段階取得において、連結財務諸表上、段階取得に係る損益として処理された損益の金額
- 主要な取得関連費用の内容および金額
取得原価の配分に関する事項
取得原価の配分に関する事項には、以下の内容を記載します(企業結合に関する会計基準第49項(4))。
- 企業結合日に受け入れた資産および引き受けた負債の額ならびにその主な内訳
- 取得原価の大部分がのれん以外の無形資産に配分された場合には、のれん以外の無形資産に配分された金額およびその主要な種類別の内訳ならびに全体および主要な種類別の加重平均償却期間
- 取得原価の配分が完了していない場合は、その旨およびその理由
- 発生したのれんの金額、発生原因、償却方法および償却期間。負ののれんの場合には、負ののれんの金額および発生原因
上記「3」について、繰延税金資産および繰延税金負債に対する取得原価の配分額は、暫定的な会計処理の対象となりますが、税効果会計の注記(繰延税金資産および繰延税金負債の発生原因別の主な内訳)にあわせて記載することができます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第306項)。
比較損益情報
当該企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額および当該概算額の算定方法ならびに計算過程における重要な前提条件を記載します。ただし、当該影響額に重要性が乏しい場合は、注記を省略することができます。取得企業が連結財務諸表を作成していない場合は、個別損益計算書への影響の概算額を、連結財務諸表を作成している場合に準じて注記します(企業結合に関する会計基準第49項(5))。
取得原価の当初配分額に重要な見直しがなされた場合
企業結合年度の翌年度において、暫定的な会計処理の確定に伴い、取得原価の当初配分額に重要な見直しがなされた場合には、当該見直しがなされた事業年度において、その見直しの内容および金額を注記します。なお、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同じとなる場合には、個別財務諸表においては、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができます(企業結合に関する会計基準第49-2項)。
連結財務諸表を作成しない場合の注記事項
連結財務諸表を作成しない場合には、以下の内容を注記します。
逆取得に係る注記
逆取得となる企業結合において、当該取得企業の資産および負債を企業結合直前の適正な帳簿価額により計上する方法を適用した場合で、連結財務諸表を作成しないときには、取得とされた企業結合の注記事項の定めにかかわらず、以下の内容を注記します(企業結合に関する会計基準第50項)。
- 企業結合の概要
- 財務諸表に含まれている被取得企業または取得した事業の業績の期間
- 取得原価の算定等に関する事項
- 取得原価の配分に関する事項に準じた事項ならびにパーチェス法を適用したとした場合に個別貸借対照表および個別損益計算書に及ぼす影響額
影響額の記載
逆取得に係る注記における「影響額」の記載は、パーチェス法を適用した場合との差額による記載、または、パーチェス法を適用した場合の貸借対照表および損益計算書の主要項目による記載のいずれかの方法によります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第307項)。
パーチェス法を適用した場合との差額による記載は、以下の事項を記載します(同適用指針第307項(1))。
- 貸借対照表項目
資産合計、流動資産合計、固定資産合計、負債合計、流動負債合計、固定負債合計、純資産合計、のれん - 損益計算書項目
売上高、営業損益、経常損益、税引前当期純損益、当期純損益、のれんの償却額(または負ののれん)、1株当たり当期純損益
企業結合の概要に準じた注記事項
企業結合の概要(企業結合に関する会計基準第49項(1))に準じた注記事項は次の事項とします(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第307-2項)。
- 取得企業の名称および事業の内容
- 事業の場合は相手企業の名称および事業の内容
- 企業結合を行った主な理由
- 企業結合日
- 企業結合の法的形式
- 結合後企業の名称
- 取得された議決権比率
- 取得企業を決定するに至った主な根拠
企業結合年度の翌年度以降の注記
企業結合年度の翌年度以降においても、影響額の重要性が乏しくなった場合を除き、逆取得に係る注記を継続的に開示します(企業結合に関する会計基準第50項なお書き)。
企業結合年度の翌年度以降に連結財務諸表を作成することとなった場合
企業結合年度の翌年度以降に連結財務諸表を作成することとなった場合には、影響額の重要性が乏しくなった場合を除き、当該企業結合を 反映した連結財務諸表を作成します(企業結合に関する会計基準第50項なお書き)。
段階取得に係る注記
段階取得であって、連結財務諸表を作成しないときには、取得とされた企業結合の注記事項の定めにかかわらず、次の事項を注記します(企業結合に関する会計基準第51項)。
- 取得とされた企業結合の注記事項に準じた事項。ただし、「段階取得において、連結財務諸表上、段階取得に係る損益として処理された損益の金額(同会計基準第49項(3)③)」を除く
- 個別財務諸表において、連結財務諸表上の段階取得に係る損益(同会計基準第25項(2)なお書き)に準じて算定された差額
- 連結財務諸表上、支配を獲得するにいたった個々の取引すべての企業結合日における時価をもって、被取得企業の取得原価を算定(同会計基準第25項(2))する場合に準じて、取得企業の取得原価を算定したとした場合における個別貸借対照表および個別損益計算書に及ぼす影響額
共通支配下の取引等に係る注記事項
企業結合年度において、共通支配下の取引等に係る重要な取引がある場合には、次の事項を注記します(企業結合に関する会計基準第52項)。
- 企業結合の概要
- 実施した会計処理の概要
- 子会社株式を追加取得した場合
- 非支配株主との取引に係る親会社の持分変動に関する事項
なお、個々の共通支配下の取引等については重要性が乏しいが、企業結合年度における複数の共通支配下の取引等全体では重要性がある場合には、当該企業結合全体で注記します。また、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同じとなる場合には、個別財務諸表においては、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって 代えることができます。
企業結合の概要
企業結合の概要には、以下を記載します(企業結合に関する会計基準第52項(1))。
- 結合当事企業または対象となった事業の名称およびその事業の内容
- 企業結合日
- 企業結合の法的形式
- 結合後企業の名称
- 取引の目的を含む取引の概要
子会社株式を追加取得した場合
子会社株式を追加取得した場合には、以下の事項を記載します(企業結合に関する会計基準第52項(3))。
取得原価の算定に関する事項
- 追加取得した子会社株式の取得原価および対価の種類ごとの内訳
- 株式を交付した場合には、株式の種類別の交換比率、その算定方法、交付または交付予定の株式数
- 企業結合契約に定められた条件付取得対価の内容、それらの今後の会計処理方針
非支配株主との取引に係る親会社の持分変動に関する事項
非支配株主との取引によって増加または減少した資本剰余金の主な変動要因および金額を記載します。なお、個別財務諸表においては当該注記を要しません(企業結合に関する会計基準第52項(4))。
子会社が連結財務諸表を作成しないときの注記事項
子会社が親会社を吸収合併した場合で、子会社が連結財務諸表を作成しないときには、親会社が子会社を吸収合併したものとした場合と比較した当該子会社の個別貸借対照表および個別損益計算書に及ぼす影響額を注記します(企業結合に関する会計基準第53項)。
影響額の記載は、親会社が子会社を吸収合併したものとした場合との差額による記載、または、親会社が子会社を吸収合併したものとした場合の貸借対照表および損益計算書の主要項目による記載のいずれかの方法によります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第315項)。
親会社が子会社を吸収合併したものとした場合との差額による記載は、以下の内容を記載します(同適用指針第315項(1))。
- 貸借対照表項目
資産合計、流動資産合計、固定資産合計、負債合計、流動負債合計、固定負債合計、純資産合計、のれん - 損益計算書項目
売上高、営業損益、経常損益、税引前当期純損益、当期純損益、のれんの償却額(または負ののれん)、1株当たり当期純損益
なお、当該注記は企業結合年度の翌年度以降においても、影響額の重要性が乏しくなった場合を除き、継続的に開示します。また、企業結合年度の翌年度以降に連結財務諸表を作成することとなった場合には、影響額の重要性が乏しくなった場合を除き、当該企業結合時に親会社が子会社を吸収合併したものとした連結財務諸表を作成します(企業結合に関する会計基準第53項なお書き)。
共同支配投資企業における注記事項
共同支配投資企業は、企業結合年度において重要な共同支配企業の形成がある場合には、共通支配下の取引等に係る注記事項の「企業結合の概要」および「実施した会計処理の概要」に準じて注記を行います。このうち、「企業結合の概要」の記載にあたっては、共同支配企業の形成と判定した理由を併せて注記します(企業結合に関する会計基準第54項)。
なお、個々の共同支配企業の形成については重要性が乏しいが、企業結合年度における複数の共同支配企業の形成全体では重要性がある場合には、当該企業結合全体で注記します。また、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同じとなる場合には、個別財務諸表においては、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができます(同会計基準第54項なお書き)。
重要な後発事象等の注記
貸借対照表日後に完了した企業結合や貸借対照表日後に主要条件が合意された企業結合が、重要な後発事象に該当する場合には、取得とされた企業結合の注記事項、共通支配下の取引等に係る注記事項(「財務諸表に含まれている被取得企業または取得した事業の業績の期間」「取得原価の配分に関する事項の取得原価の配分が完了していない場合は、その旨およびその理由」「比較損益情報」を除く)、共同支配投資企業における注記事項に準じて注記を行います。ただし、未確定の事項については注記を要しません(企業結合に関する会計基準第55項)。
また、当事業年度中に企業結合の主要条件が合意されたが、貸借対照表日までに企業結合が完了していない場合(ただし、重要な後発事象に該当する場合を除く)についても、これらに準じて注記を行います(同会計基準第55項また書き)。