取得とされた株式移転の連結財務諸表上の会計処理
株式移転が行われた場合、株式移転設立完全親会社が連結財務諸表を作成します。
投資と資本の消去
株式移転による企業結合が取得とされた場合の資本連結の手続は、「連結財務諸表に関する会計基準」にしたがい、以下の投資と資本をそれぞれ相殺消去します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第124項)。
- 株式移転設立完全親会社の取得企業に対する投資と株式移転完全子会社(取得企業)の資本
- 株式移転設立完全親会社の被取得企業に対する投資と株式移転完全子会社(被取得企業)の資本
また、上記「2」の消去差額であるのれん(または負ののれん)は、企業結合が取得とされた場合ののれんの会計処理(同適用指針第72項および第76項から第78項)に準じて会計処理します。
株式移転完全子会社(取得企業)に関する会計処理
株式移転設立完全親会社の取得企業に対する投資
株式移転設立完全親会社の取得企業に対する投資は、子会社株式(取得企業株式)の取得原価の算定(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第121項(1))により算定された価額とします(同適用指針第124項(1)①)。
株式移転完全子会社(取得企業)の資本
株式移転完全子会社(取得企業)の資本は、取得企業の適正な帳簿価額による株主資本とします(同適用指針第124項(1)②)。
両者はいずれも取得企業の適正な帳簿価額を基礎とした金額のため、消去差額は生じません(同適用指針第124項(1))。
株式移転完全子会社(被取得企業)に関する会計処理
株式移転設立完全親会社の被取得企業に対する投資
株式移転設立完全親会社の投資は、企業結合が取得とされた場合の取得原価の算定方法(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第37項から第50項)に準じて算定します(同適用指針第124項(2)①)。
株式移転完全子会社(取得企業)が株式移転日の前日に他の株式移転完全子会社(被取得企業)となる企業の株式を保有していた場合、株式移転日の時価に基づく額を取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理します(同適用指針第124項(2)①なお書き)。詳細は、企業結合が取得とされた場合の取得原価の算定方法(連結財務諸表上の会計処理)を参照してください(同適用指針第46-2項)。
投資会社である取得企業が持分法適用関連会社である被取得企業と企業結合した場合には、株式移転日の前日の被取得企業の株式(関連会社株式)の持分法による評価額と株式移転日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益とし、これに見合う金額は、のれん(または負ののれん)の修正として処理します。なお、株式移転日の前日の個別財務諸表上の関連会社株式の帳簿価額と持分法による評価額との差額を、のれん(または負ののれん)の修正として処理します(同適用指針第124項(2)①)。
株式移転完全子会社(被取得企業)の資本
株式移転完全子会社(被取得企業)の資本は、企業結合が取得とされた場合の取得原価の配分(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第51項から第78項参照)に準じて算定された識別可能資産および負債の差額とします(同適用指針第124項(2)②)。
取得企業の資産および負債の引継ぎ
連結財務諸表上、株式移転設立完全親会社は株式移転完全子会社(取得企業)の資産および負債の適正な帳簿価額を、原則として、そのまま引き継ぎます。ただし、株式移転完全子会社(取得企業)が連結財務諸表を作成している場合には、株式移転完全子会社の連結財務諸表上の帳簿価額で受け入れます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第125項)。
ただし、連結財務諸表上の資本金は株式移転設立完全親会社の資本金とし、これと株式移転直前の株式移転完全子会社(取得企業)の資本金が異なる場合には、その差額を資本剰余金に振り替えます(同適用指針第125項ただし書き)。
株式移転日が被取得企業の決算日以外の日である場合
株式移転日が株式移転完全子会社(被取得企業)の決算日以外の日である場合には、株式交換日が株式交換完全子会社の決算日以外の日である場合の取扱いと同様に取り扱います(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第126項)。